【英語4技能試験】日本英語検定協会に聞いたTEAP誕生の背景

※本記事は2015年9月時点に作成されたものです。

TEAPは、大学で必要になるアカデミックな英語能力を判定することを目的に2014年から実施されています。以来、入試での採用を決める大学も増加しています。

今回インタビューしたのは、TEAPの開発・制作を担当されている公益財団法人 日本英語検定協会の本間充さん(制作部・英語教育研究センター部長)です。TEAPが誕生した経緯や今後の展望についてうかがいました。

TEAPは5年の研究・開発期間を経て誕生した

TEAPは上智大学と日本英語検定協会が共同開発されていますが、いつ頃、どのようなきっかけで一緒に開発することになったのでしょうか?

共同研究が始まったのは2009年です。当協会は、英検®️以外の新しい検定試験の姿を模索していました。ちょうどその頃に、上智大学で「上智の入試を変えたい。ひいては日本の大学入試、英語教育改善に結び付けたい」という思いがあることを、言語教育研究センター長(当時)である吉田研作先生からうかがったのです。それから基礎的な研究がスタートしました。たとえば、アカデミックな場面ではどういう英語力が必要とされるのかということを大学の英語教員とともに調査するなど、ニーズを整理した上で、テストを設計したのです。またリスニングとリーディングについては、2010年から上智大学とも共同で予備テストを繰り返し行い、徐々にブラッシュアップしていきました。

2014年度の第1回検定は2技能のみ、第2回に3技能、第3回に4技能の試験実施となりましたね。

はい。大学受験というハイステークスな試験ですから、トライアルを慎重に重ねました。2014年12月に行われた第3回検定から4技能での試験実施でしたが、まだ昨年は4技能スコアを受験生に課した大学はなかったため、TEAPの受験者数は多くはありませんでした。しかしその結果、将来的な4技能の大規模実施を見据えた試験運営のノウハウ蓄積することができました。

4技能試験となると、やはりスピーキングテストの運営が大変だったりするのでしょうか?

スピーキングがあるからというよりも、大学入試のためのテストということで公正かつ厳正な試験実施が求められます。受験者の本人確認もそのうちの一つと言えるでしょう。昨年段階的に4技能の試験を導入していったことで、そういった課題を無理なく克服できたと考えています。

今後、受験者が増えるに従い会場も増やしていく必要がありますね。現在の試験開催地は全国11都市ということで、住んでいる場所によっては2〜3時間かけて行くという受験者もいるのでしょうか。

そうですね。たとえば、沖縄在住の受験生であれば、福岡会場に行くよりも受験予定の東京の大学の下見も兼ねて東京まで来る、という方もいらっしゃいます。今後、試験開催地は採用大学が増えていくのに従って増やすことを検討しています。

スピーキングテストが対面式である理由

試験によっては、スピーキングテストをコンピューターでやる場合もありますが、TEAPは対面式なんですね。

はい。プロダクション(発話)とインタラクション(相手との双方向的なやり取り)の2つの能力を測れるようにしたかったのです。

我々が運営している英検®️、TEAP、IELTSはすべて対面式のスピーキングテストを行っています。機械に吹き込む形式のテストですとプロダクションしか測れませんが、対話式だとインタラクションの能力も測れます。たとえばTEAPでその特徴を最も活かしているのが、受験者側が面接官に質問し、欲しい情報を引き出すPart2の問題です。

対面でのスピーキングテストの意義はわかりましたが、面接や採点の運用が大変ですね。今後受験者が増えてくると、大量の面接官が必要になってくるかもしれませんが、対応できるのでしょうか?

私たちは、英検®️のノウハウと体制を活用していますので、現在では円滑に試験実施を行うことができております。しかし、今後さらにニーズが高まり、センター試験のように一度に50万人が受験ということになると、それに応じた体制を作ることが必要になると思います。現在、今後のそういったニーズを想定して内部では検討を行っております。

高校生向けTEAP体験セミナーは「満員御礼」

各大学のTEAPの入試への導入状況はいかがですか?

上智は初年度から一般入試で利用していますが、他に興味をもっていただいた大学では、まずはAO入試など特別入試で導入されるところが多かったですね。

早稲田大学のように、TEAPを含む4技能試験利用型入試枠として特定の学部の一部の人数を募集する大学もありますね。

スーパーグローバル大学(SGU)に指定された大学は、今後数年かけて外部試験を導入していくと宣言しています。SGUの中でも大学によって温度差はありますが、急に全面的に導入すると受験生や教育現場が混乱するということもあります。今はどこの大学も様子を見ながら段階的に入れているところでしょうね。

入試に4技能試験を導入する大学が増えていくことは間違いなさそうですね。高校生にはまだまだ4技能試験が浸透していないと感じます。そこはどうしたら良いでしょう。

それは、私たちも知りたいくらいですが(笑)、昨年、今年と実用英語推進機構(安河内哲也氏が代表理事を務める団体)との共催で高校生対象のTEAP体験セミナーを開いたところ、満員御礼状態になり、とても好評でした。上智大学、立教大学、青山学院大学など東京での開催だったのですが、志望大学だからと遠方から来てくれる高校生もいました。

TEAP、英検®︎、IELTSは目的によって使い分けるべし

4技能試験を入試に取り入れている大学の多くは、TEAPの他にも複数の外部試験から選択して受験できるようになっています。日本英語検定協会ではTEAP、英検®︎、IELTSを運営されていますが、高校生はどういう基準で受ける試験を選べばよいのでしょうか?

TEAPは大学入試が主な目的、一方英検®️は生涯学習、つまり子どもからシニアまで英語学習の節目ごとに自らの能力を評価することを主な目的として開発されました。高校生の皆さんは、普段の学習の成果を測定するために積極的に英検®️をご活用いただき、結果的に入試でも使用できるのであれば資格として活用いただければよいと思います。また、現在はTEAPの受験都市が限られているので、入試目的でも英検®️の方が受けやすいということであれば、ぜひそうしていただければと思います。IELTSは留学のために利用できる試験なので、もし大学入学後に留学しようと考えているのであれば、入試のときもIELTSを使って将来の留学につなげればよいでしょう。逆に留学を考えているけれど、まだIELTSを受けるほどの力がないという場合は、まずはTEAPを受けて、その後IELTSを受験してもいいと思います。それぞれのテストの性格や目的によって選んでほしいですね。

東大の2016年度から始まる推薦入試では、IELTSと英検®︎は選択肢にありますがTEAPはないですね。

TEAPで測れるのはCEFRのB2レベルまでなので、東大が今回求めるレベルはそれ以上ということかもしれません。東大の場合、新入生の中から希望者300人にIELTS受験料の補助をしています。東大に入学するような方にとっては、IELTSは国家公務員採用の総合職試験でも活用できるというのもメリットでしょうね。

4技能試験の普及で、英語好きの生徒がもっと伸びる環境に

これからは入試でも4技能が問われるということで不安に思っている高校生もいるかもしれません。最後に、高校生へのメッセージをお願いします。

英語が好きで、中学・高校と比較的バランス良く4技能を学んできたような生徒でも、高校3年生になると受験用の英語学習に専念しなければいけないという状況があると思います。本当は英会話スクールやベストティーチャーのようなオンライン英会話でもっと会話力を身に着けたいけれど、受験だからあきらめなければいけないとか…。でも4技能試験が普及すると、学校の中でもっと楽しく英語が学べるようになるはずです。もし自分の学校がそうでないならば、「これからは4技能を学ぶ時代です」と先生にアピールして(笑)、どんどん4技能を学んでほしいですね。実際、先生たちの意識も変わってきているはずです。また、英語にあまり興味が無いという人もいると思いますが、せっかく勉強するならリーディングとリスニングだけやるよりも、スピーキングとライティングもやった方がはるかに効率的に学習できます。話したり書いたりというアウトプットをすることで気づきが生まれて、読んだり聞いたりする力も伸びていくからです。ぜひ4技能を総合的に学ぶことで、英語力を身につけてください。

※英検®は、公益財団法人日 本英語検定協会の登録商標です。このコンテンツは、公益財団法人 日本英語検定協会の承認や推奨、その他の検討を受けたものではありません。

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