※本記事は2015年9月時点に公開されたものです。
オンライン英会話スクール「ベストティーチャー」が英語4技能試験の普及のため今年6月に立ち上げた『4skills』が、満を持してこの方に取材を依頼しました。カリスマ英語講師として東進ハイスクール・東進ビジネスクール講師として教鞭をとりながら、文部科学省の審議会・連絡協議会を通じて英語4技能試験の普及に誰よりも精力的に取り組む「英語4技能化」の伝道師、安河内哲也先生が『4skills』に登場です。
会議室で緊張の面持ちで待つ我々の前に、安河内先生は「4skills for JAPAN」と書かれた赤いバッジがぎっしり詰まった瓶を抱えていらっしゃいました。
今回インタビュアーを務める弊社代表の宮地とは旧知の中であり、「久しぶりだね」と笑顔であいさつを交わしインタビューがスタート。話は宮地が4年前にオンライン英会話スクール「ベストティーチャー」を立ち上げるときに安河内先生にアドバイスを聞きに行った時から始まりました。
– ベストティーチャー代表宮地の回想 –
2011年秋に前職を辞めて英語ビジネスで起業すると決めた時、これは困ったぞと思いました。今まで私は金融業界やEC業界にいたため、教育業界は全くの初めて。とはいえ悩んでいる時間もないので、まずは英語業界で自分に考え方が近いと思う方にお会いして、ベストティーチャーの原型をどう思うか聞いて回ることにしました。
安河内先生は面識がないにも関わらず会ってくれることになり、飯田橋の今はなき「和SWEETS TEA ROOM四季の実 ラムラ」を待ち合わせ場所としました。本当に来ていただけるのかな? と不安でしたが、テレビコマーシャルで拝見した安河内先生の雰囲気そのままでお越しいただけました。
目次
4年前の安河内先生の予言「これは本質的なサービスだ。でも苦戦すると思う」
宮地:私が初めて安河内先生にお会いしたのは、ベストティーチャーを立ち上げる直前の2011年秋でした。
安河内:Facebookで連絡くれたんですよね。あのときは英語のテスティングのしくみとか業界のこととか、まだそんなにお分かりになっていないという時でしたね。
宮地:おっしゃる通りです。英語ビジネスで起業しようと思ったのは、市場が5000億以上あり大きい割に、これをやれば英語が話せるようになるというソリューションがないいびつな構造だと思ったからです。これは起業して人生を捧げるだけの価値があるテーマだと思いました。ただ、私は英語業界のことを全く知らないので困っていました。それで、業界で著名な安河内先生にアドバイスをいただこうとご連絡したのです。そうしたらご快諾いただけて、初対面で「英語業界でいいことをやりたい人はみんな仲間だから」と言っていただいたのが衝撃でした。その時に、ベストティーチャーの原型を見ていただいたんですが、覚えてらっしゃいますか?
安河内:覚えてますよ。「ライティングを中心にして発話力を磨いていこう」というコンセプトでしたよね。プロダクション(=英語で発信すること)に重きをおいているのはすごくいいな、と思いました。ただ、当時の日本の英語教育というのは、まだ2技能のマークテストに支配されている状況だったので、結構苦しむんじゃないかな、という気はしたんですよね。
宮地:そう言われたのは鮮明に覚えています。発信が大切だと分かったから起業するのに、そこで苦戦するのか、と(笑)
安河内:なんでかというと、自分で話すとか書くということは、世の中で求められてはいるんだけど、例えば企業が社員に対してマークシート式のリーディングとリスニングのテストで点数を取りなさいと言っている以上、どうしてもみんな、スピーキングやライティングを省いて、マークシート対策に流れていってしまいます。そんな状況に反旗を翻したわけだから、スピーキングとライティングのテストの普及が同時進行しないと難しいだろうなと思ったんですよ。そのとおりだったでしょ?
宮地:はい。率直に言いますと、2011年からの3年間は鳴かず飛ばずで苦しい状況でした。やっていることは正しいはずなのに、思ったより受け入れられないことに落ち込んだときもありました。ただ、それでも私がベストティーチャーのコンセプトを変えなかったのは、マークテストのためではなく、「自分が発信したいこと」を起点に勉強していかないと実践的な英語力が伸びないことが分かっていたからです。
安河内:まさにそのとおり。発信力を磨けばライティングやリーディングの力も伸びます。でも、理解されないよね。TOEICはみんな2技能のテストだと思っていますが、本当は4技能のテストなんです(注:リーディング・リスニングのTOEICと、スピーキング・ライティングのTOEIC SWに分かれている)。TOEIC SWを受験する人が増えていけば、宮地さんがやっているような発信する英語学習が拡大するだろうなと思っていましたよ。日本人はまじめだから、テストがあればそれに向かって一生懸命勉強する。4技能のテストを普及させなければ、日本人の「発信力」を向上させるのは難しいと思いますね。
いまだに2技能試験を信奉する日本の英語教育は、海外に周回遅れ
宮地:当時と比べると、2020年へ向けて大学入試で4技能試験の導入も進んでいますし、状況が変わりましたね。それはもう安河内先生のおかげなのですが。
安河内:日本の英語教育が世界に追いつく可能性が、やっと出てきました。
宮地:現状、日本はかなり遅れていると。
安河内:ええ。前世紀には、あのTOEFLでさえ2技能のテストで文法の問題とかも入っていたんですよ。当時はそれで英語力を測れると考えられていたんですね。でも、2技能で高いスコアをとった日本人をはじめとする東アジアの人たちが、アメリカの大学に行ったら全然しゃべれないということが起きちゃった。そういう事情もあり、TOEFLも4技能の試験に変わったんです。今では世界のほとんどのトップ大学が、先進国からの留学生の判定には、4技能の試験しか認めていません。イギリスで作られているIELTSもケンブリッジ英検も4技能。そうやって2技能試験にはもはや信頼性がないということが世界的に常識になっている中、日本だけ2技能試験を続けるという選択肢はありえないですね。このままだと日本の英語教育の国際通用性がなくなってしまいます。グローバル化と叫びながら、センター試験はまだ2技能で、国立大の2次試験ではいまだに和訳問題をやらせていたりするのが日本の状況です。スーバーグローバル大学と自称している多くの大学が、スーパーガラパゴスな英語評価をしているんです。
大学受験改革がどのように日本人の英語を変えるのか
宮地:それで大学入試改革の話になるのですね。
安河内:今、関係各所でがんばっているところです。昨年、大学入試では4技能を総合的に評価すべきである、そのために4技能を測定する資格・検定試験を活用すべきであるという政策提言が出ていて、それに基づいて大学入試の改革が進んでいます。今後は連絡協議会(注:文科省が設置した「英語力評価及び入学者選抜における資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会」。学校関係者、専門家、英語の資格・検定団体、経済団体等からなり、安河内先生もメンバーの一人)で具体的な詰めに入ります。
宮地:その流れで日本独自の4技能試験も生まれましたね。大学入試が変わると、日本人の英語がどのように変わっていくのでしょうか?
安河内:日本で一番大きな影響力を持っているテストは大学入試ですね。TOEICよりも影響力があります。日本の若者の何人かに一人は大学受験をしますね。その中でもガッツリ勉強する25%くらいが、将来の日本の知的牽引者に育っていく可能性が非常に高いわけです。今は日本の知識人層でもガラパゴスな受験勉強のせいで英語が苦手な方が多いですが、大学受験が変わって将来の知的リーダーたちが4技能試験に向けた勉強をすれば、今よりもかなり改善するでしょう。スピーキングテストに向けて勉強すれば、世界でプレゼンをする最小限の能力は身につくし、ライティングテストに向けて勉強すれば、曲がりなりにもeメールが書けるようになる、リーディングに関しても、新聞の簡単な記事や教科書は読めるようになるでしょう。そうなれば、なんとか世界に出て行くための基礎作りができる。もちろん、それに合わせて現場の改革はもっと重要ですが。
「日本の英語教師は4技能は教えられない」は大きな勘違い?
宮地:そういう状況の中で懸念されているというか、私がよく質問されるのは、4技能はいいけど学校の英語教師は4技能を教えられるのか? ということです。
安河内:塾教育も学校教育も、今までやっていたものとは本質的に別のものになりますから、教える側はマインドセットの大転換が必要です。ただ、英語教師の資質に関してはメディアで色々書かれていることを読むと、ちょっと頭にくることもあるんですよ。「英語教師のレベルが低い」「英語が話せない」なんてよく言われていますが、私が研修をして回っている先生方は、変わる気満々で、非常にやる気がありますよ。
宮地:おお!
安河内:多くの先生は、「受験英語ではなく世界で通用する英語を教えるために先生になったのに、今は仕方なく受験のための英語を教えなければいけない」と嘆いています。だから、「早く受験に変わって欲しい。」「もっとまともな英語を教えたい」と、これから状況が変わることに期待している先生も多いんです。
宮地:先生方の英語力は実際のところどうなんでしょうか?
安河内:それはもちろん、まだ英語が苦手な先生もいますが、中学と高校の先生は、大学で英語の専門の教育を受けてきた人たちですから、平均としては塾や予備校の先生よりできるはずですよ。
宮地:英語ができない先生が大学入試での4技能試験導入に反発しているのかな、という印象を持たれている気がします。
安河内:もちろん、なかには慎重な先生もいますよ。でも、「変らなければ」と考えている先生の方が主流だと思います。みんな、大学受験とそれにくっついているいろいろなビジネスのせいで英語教育がめちゃくちゃになっているのはわかっているんです。これを機会に良くしていかなければいけないと考えている先生ほとんどですよ。もちろん、受験を変えるだけで、全てが解決するわけではないということもよくわかっています。受験と現場の改革を一体的に進めようと、英語の先生方は真剣に考えてがんばっているんです。
宮地:なるほど。その辺り完全に誤解されていますね。言い方はよくないかもですが、先生方がなめられてしまっていますね。
安河内:ええ。かなりの誤解がありますね。今は4技能の指導を求める指導要領から乖離した偏った大学受験のせいで、指導要領通りのバランスのよい英語教育ができなくなっているんです。大学受験が変われば、高校3年生の冬まで4技能のバランスを保って教えることができるようになります。試験前日まで、英語のプレゼン練習やディベートなどのスピーキングの授業もできますね。
(参考:「中高英語教師の約7割が大学入試への英語外部試験導入に賛成」)
懸念点があっても、2020年の大学入試改革への歩みを止めるな!
宮地:学校だけでなく、民間の塾や予備校も変化が避けられないですよね。
安河内:大学受験が4技能になれば、今の受験対策は通用しなくなります。そうなると新しい生態系が生まれてきますね。塾も予備校も教育系の出版社も変わっていくでしょう。さらに英会話会話学校と、塾・予備校の境目がなくなっていくでしょう。英会話スクールもお稽古ごと感覚の「お友達英会話」からもっと論理的な発話を練習する場になっていくでしょう。毎回のレッスンに目的となるタスクや評価が伴いますから、生徒も講師も真剣に発話するようになるでしょう。これまでは、偏った入試に偏った対策を提供していた民間セクターも、かなり正常化すると期待できます。例えば、スピーキングテストに対しての対策は悪くなりようがないです。どんなテクニックを使おうと、結局最終的には、論理的発話が求められるわけですから。それが、偏った対策を生んでいる文法問題や和訳問題との本質的な違いです。大切なのは、試験対策自体が悪なのではなく、よい試験対策と悪い試験対策があるということです。また、よい試験対策を生む問題と、悪い試験対策を生む問題があるということです。そこをしっかり区別して議論しなければなりません。
宮地:大学受験の変化は、高校生以下の世代にも影響を及ぼしますか。
安河内:はい、そうなると思います。中学の学力調査も4技能になりますし、高校生基礎学力テストも4技能で行う予定ですね。そのように、大学受験だけではなく、指導と評価を全年代を通じて4技能のバランスの取れたものにしていこうという改革が今回の改革なんです。また、もちろん、大学のカリキュラムや留学プログラムにも大きな影響を与えることにもなるでしょう。さらに、実業界の英語教育も変わっていけば良いなあと思っています。大学受験が4技能になって、世界的にも2技能の試験は信頼されていない状況の中、企業の経営者は「なんでうちだけ2技能でやっているんだ」と考えてほしい。例えば、TOEICを使うにしても4技能をうまく使い分けるようになっていって欲しいですね。また、今後は新しいビジネス系の4技能試験が出てくることも考えられます。
宮地:楽しみですね。となると、大学入試が本当に変わるかどうかが大きな分かれ目になります。先ほどの「英語教師が本当に4技能を教えられるのか」に続き、4技能試験導入に慎重な方の懸念としては「ライティングやスピーキングの採点がきちんとできるのか?」なのかなと思います。マークシート式が良いと言われているのはその点なのかな、と思うのですが。
安河内:公平性とスピードの点でどうなのか、という話ですね。確かに国語の試験だと、採点は日本でやらなきゃいけないから対応しきれるのかという問題があるでしょう。でも英語は、インターネットを使って管理された、世界中の採点ネットワークを利用することができるんです。複数の採点官の評価を平均化しスコア化するシステムも確立されていますし、評価基準も開示されています。また、ほとんどのテストでは、その評価基準は世界共通のCEFRという基準に準拠して作成されています。IELTSもTOEFL iBTも、年間数百万人の受験者の4技能の力をスコア化するシステムができていて、それを世界のほとんどのトップ大学が信用しているわけです。ハーバード大もイエール大も、オックスフォード大もケンブリッジ大も信用している試験を日本の大学だけが信用しないというのもおかしな話です。
宮地:世界的に採用されている4技能試験は、とても信頼性が高いということですね。
安河内:日本で作られている英語4技能試験も、当然 TOEFL iBTやIELTSが比較対象になりますから、それと同様の水準で作成されています。受験機会の分散による、時間的な問題の解消、CEFRに準拠することによる国際通用性の確保、ルーブリック(学習目標に対する到達度の評価基準)の開示による妥当性の確保、IRT(項目反応理論)を使用した問題作成などなど、世界レベルの信頼性を確立するためのシステムがあるんです。もちろん、受験地の拡大や受験料の引き下げなど、課題はありますが、規模の拡大と共に解消されていくことが期待できます。
宮地:それでも、人が採点する限りばらつきがあるのではという懸念があったりします。
安河内:採点者は定期的な研修を受けて採点者の資格を更新しなければ採点できません。また、複数採点官の採点結果を平均化し、さらにスーパーバイザーがそれをチェックします。ルーブリックに沿い、信頼性が高い採点がされるように発達してきているんです。「面接して、主観で適当につけるだけじゃないか」というような低水準のものじゃないんです。
宮地:なるほど。上智、早稲田、立教など一部の大学はすでに入試に外部の4技能試験を採用し始めていますが、私の感覚だとまだまだ高校生がそれについていっていないようです。受験料が高いことがネックだという方もいますね。
安河内:大学受験に願書を1つの大学に出願するたびに数万円払っていることを考えれば、それに比べてかなり低い水準まで下がってくるのではと期待しています。すでにGTEC CBTは1万円を切っていますし。模試や入試に使えないテストに受験料を払うよりは4技能試験に払った方が良いのではないかと思いますね。全国模試で良い点をとってもそのスコアを大学入試に使えるわけではありませんが、4技能試験は良いスコアをとればそれがそのまま入試に使えるという点で、大きなバリューがあると考えています。
宮地:大学によっては、英語の得意な子はむしろ従来型の一般入試を受けたほうが受かりやすいというような話も聞きます。
安河内:そこは、私も、これから絶対に解消すべき点だと思います。ただ、実際是正されてきていますね。良いスコアを取ったときに捨てる部分の得点が少なくなるように変わっています。立教大学では、グローバル型入試の基準点は低いですが、高いスコアがとれた人は特別入試みたいなものが用意されていたり、配慮されています。今後は4技能試験を使える大学がどんどん増えますから、いろいろな大学の基準点を比較し、自分のスコアと行きたい大学・学部をならべて有利な進路を選べるようになっていくでしょう。
宮地:去年受験した先輩が言っていたことが、今年は当てはまらない場合もあるということですね。
安河内:はい。回数を重ねるほど、各大学で統計に基づいた調整が行われていくので、毎年受験生にとって使いやすいものになっていくはずです。4技能のきちんとした英語学習をした受験生が不利になるようなことは大学にとっても本意ではありませんからね。
宮地:この問題は歩みを止める理由にならないと。これも声を大にして主張したいですね。いくつもの資格・試験がある中で、今後これが伸びていくだろうというのはありますか?
安河内:それは関係者や国が決めることではないですね。大学がどれを選ぶかという問題です。大学が、レベルの妥当性や、採点の信頼性、国際通用性を考慮した上で採用する試験を決定すれば良いのだと思います。各試験機関があらゆる指標で、良いものを作る競争をした結果、どうなるかですね。
宮地:ただ、4技能試験型入試を実施している大学は、複数の試験を採用しているケースが多いですよね。
安河内:大学も、今は慎重に実験している段階で、今後はどの試験が信頼性が高いのか結果を検証していくでしょう。
宮地:なるほど! 大学がどうやって入学後の生徒の評価をするかは様々だと思いますが、「この試験を利用して入学した学生は留学した率が高い」といった数字が取れていくわけですね。大学の4技能試験の採用状況を見ながら、高校や民間の塾もどの試験の対策講座に力を入れるか決めていくという感じでしょうか。
安河内:ここで私が言いたいのは、4技能試験はどの試験も本質は似てますから、「個別の試験の対策」ということにこだわりすぎないようにすべきだということです。結局4技能試験に向けての最高の対策は、本質的な英語力を高めることです。傾向を分析して表面的なテクニックをどうこうしても、4技能試験のスコアが上がるわけではありません。まずは、テストから離れて、4技能の本質的な能力を育てていく指導が中心となるべきです。個別のテストや問題の尻ばっかり追っかけまわすような指導をしても、簡単に点数が上がるものではありません。一度受けてみれば、すぐにわかることですが、そこが、2技能試験との大きな違いです。
宮地:なるほど、その発想はありませんでした。弊社は試験別に対策コースを用意しています。
安河内:まあ、それもいいのですが、どの試験も4技能の基本部分は変わらないんですよ。4技能の基本の力がない学生が傾向と対策だけやってもたいした点数は取れないと思います。普通に英語をバランスよく勉強するのが最大の対策です。実際に4技能試験を受けてみると、そのことはすぐにわかります。
宮地:まずは幹となる力を付けるべきだということですね。
安河内:そう、結局英語はテストのためにやるものではないということです。このインタビューだけだと、私がテストのことを礼賛しているように感じられるかもしれませんけどね。テストはあくまでも改革の一部にすぎないのですよ。
宮地:私も、昔は「自分の英語が大事だ」と言っていたのに「試験対策だ」ということを変えたと指摘されることがありますが、それは誤解です。結局、試験に出たり会社が強制しなきゃ勉強しないんですよ。実用的な英語を身につけるための必要悪だと。
安河内:これはどの国でも同じで、その必要悪をうまく利用して教育を良くしていかないと、理想主義をとなえても何も変らないですね。それと、テストは必要悪かもしれないけど悪いテスト問題が与える影響は本当に最悪なんですよ。悪いテストには、教育を破壊し、荒廃させるほどのものすごい影響力がある。私もその現場に長い間いて、それをこの目で見てきました。
宮地:だから4技能試験の普及に力を入れる必要があると。実は私も昨年の文科省の連絡協議会に参加させていただいたのですが、会議の最初で安河内先生が、「一番大切なのは、どの試験を使うかではなく、2技能か4技能かです! 4技能以外の試験が入り込めないようにしよう!」とおっしゃっていたのが象徴的でした。ベストティーチャーも、自分から発信する力を鍛える英語学習サービスの改善に死に物狂いで取り組んでいきます。
安河内:そうですね。ただ単に「外部試験や検定試験を使えばよい」ということではありませんね。技能数やレベルをしっかり検証することが大事です。ここにきて4技能以外の試験を使うのは論外だと思います。またこれからは、もっと細かく、悪い影響を与える問題と良い影響を与える問題を分けて議論を進める必要があります。「試験対策イコールすべて悪」のような乱暴な議論ではなく、本来やるべきバランスのよい英語教育と大学受験のような評価をどう結びつけるのか、どのような出題が悪い対策を生んでしまっているのか、そのようなことを精査していかなければなりませんね。バランスの取れた英語教育を目指す皆さんはみんな仲間です。これからも、がんばっていきましょう!
– ベストティーチャー代表宮地の取材後記 –
4年前のベストティーチャー立ち上げ時にお会いした安河内先生に、こうした形で再会できて、本当に仕事冥利につきると思っています。4技能試験の波が昨年秋ぐらいから実感値としても高まっておりますし、弊社も英語4技能試験対策のリーディングカンパニーとして4技能試験の普及と真の英語力を身につけられる対策サービスの提供に尽力してまいります。2020年へむけて、みんなで突き進んでいきましょう!