昨年4月、東京都教育委員会は、次世代を担うグローバル・リーダー育成に向けた学校の取組を支援するため、都内10校の中等教育学校、高等学校を、『東京グローバル10』に指定しました。
(「東京グローバル10」の詳細、指定校はこちら :http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/pickup/p_gakko/27global10.html)
昨今求められている実践的な英語教育を推進すべく、どのような考えのもと、この施策を実行されているのか、教育庁指導部指導企画課の関谷さやかさん、渡邉貴志さんにお話をお伺いしました。
『東京グローバル10』 設置の経緯について
「都立高等高校におけるグローバル人材育成の先導役を担ってもらうために、3校の中等教育学校、7校の高等学校を指定しました。これら『東京グローバル10』指定校を発端とし、グローバル人材育成に向けた取組を東京都全体に広めたいと考えています。
『東京グローバル10』に指定された学校は、もともと英語授業の改善などに積極的に取り組み、学校ごとの特色を生かした国際交流事業を展開する学校です。指定校では、JETプログラム (The Japan Exchange and Teaching Programme (外国青年招致事業)) により来日した青年やALT (Assistant Language Teacher:外国語指導助手) を積極的に活用し、生徒の英語によるコミュニケーション能力を更に高めるとともに、様々な機会を捉えて異文化への理解や適応力などを育んでいます。また、英語以外の外国語の習得にも力を入れており、将来は国際社会で広く活躍できるグローバル・リーダーを多く輩出する学校になってもらいたいと考えています。」
『東京グローバル10』の具体的な計画や、特徴的な点とは?
「『東京グローバル10』指定校で取り組まれる内容は様々です。ただ、各校とも以下3つの共通した方向性をもって取組を進めています。
- 英語授業の改善及び教員の指導力向上
- 国際理解教育の充実
- グローバル・リーダーの育成
<英語授業の改善と教員の指導力の向上>
指定した10校で実践された効果的な取組が他の学校にも広がるよう、先導的な役割を担ってほしいと考えています。常に授業を見直し、高い指導力をもって生徒の英語力やコミュニケーション能力を高めていってもらいたいですね。「聞く・話す・読む・書く」という4技能をバランスよく育成してもらいたいと考えていますが、4技能の中でも「話す」「書く」という点が弱いと考えておりますので、オンライン英会話など新たな事業についても現在検討中です。
<国際理解教育の充実>
『東京グローバル10』指定校では、全ての学校が海外語学研修や海外修学旅行などを実施しています。これらの機会を捉え、体験を通じて世界を身近に感じてもらいたいですね。また、東京都教育委員会では「次世代リーダー育成道場」という事業で約1年間の留学支援を行っています。大学受験などを考えると海外留学に躊躇してしまう生徒が多いとお考えかもしれませんが、年間200名の生徒がこの事業を通じて留学をしています。
<グローバル・リーダーの育成>
まだまだ日本人は内向き志向だと言われています。しかし、東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される2020年に向けて、日本・東京を訪れる外国人は年々増加していますし、必然的に外国の方とコミュニケーションを図る機会も増えています。こうした状況を追い風にこの内向き志向を変えていきたいと思っています。グローバル・リーダーとは、高い語学力を基に、相手を尊重しながら、自分自身の考えをもって行動できる人材であると考えていますので、多くの生徒にこういった素養を身に付けられるような学習環境をこれからも整備していきたいと考えています。」
4技能で英語を学ぶことについての考え
「現在、英語教育は過渡期にあり、大学入試でも徐々に4技能を取り入れた試験が始まっていますし、小学校での英語教科化も目前に迫っています。難しい時期ではありますが、東京都教育委員会では、これまでの状況を打破し、発信力であるSpeakingやWritingを含め、生徒の将来を考えた英語力の向上を後押ししていきたいと考えています。」
東京都教育委員会が、ますます国際化する日本社会を見据え、英語教育をより良いものへ改善するべく、動き出していることが分かりました。まさに過渡期にある日本の英語教育ですが、使える英語力を身に付けさせる教育へ変化していくことは間違いないようです。今後も英語教育の動きから目が離せません。