大学入試「英語4技能試験」のゆくえは?2020年度の課題とは

2019年11月1日、2021年1月実施の大学入学共通テストにおける英語民間4技能試験の導入延期が発表されました。共通テストの枠組みで「英語民間4技能試験の活用」を予定していた多くの大学では、今回の導入延期にともない活用を取りやめることになりました。

共通テストの枠組みでは導入が延期されたものの、中高生にとって「英語民間4技能試験」を受ける意義や必要性が消えたわけではありません。全4回でお届けする「大学入試『英語4技能試験』のゆくえは?」コラムでは、なぜ英語4技能試験に引き続き注目するべきか、その背景をご紹介します。

第1回となる本記事では、これまでの経緯、文部科学省の検討会議、2020年度の課題についてお伝えします。

大学入学共通テストの新制度が見直しへ

大学入学共通テストでの英語民間4技能試験の活用が延期になった結果、特に国公立大学の一般選抜で英語4技能試験の受検を必要とする大学は大幅に減少しました。新しい大学入試のひとつの看板である英語4技能による「グローバル化対応」の進捗に影を落としています。

ただし、一般選抜以外の選抜方法に関しては、国立・公立・私立の多くの大学で英語4技能試験が活用されますので、全体として「英語4技能評価」の方向にあることは変わりありません。

とは言え、突然の導入延期は受験生のみならず大学や高校にも大きな影響を及ぼしたため、延期に至る経緯を問題視する声もありました。そこで文部科学省は新たに「大学入試のあり方検討会議」を立ち上げ、ここまでの経緯を検証するとともに、望ましい大学入試とはどのようなものなのかを検討することにしました。

大学入試のあり方検討会議

検討会議では導入延期となった「英語民間4技能試験の活用」だけでなく、さらにその1ヵ月後に導入見送りが決まった共通テストの「記述式問題」についても経緯の検証と今後に向けた検討がなされることになっています。

記述式問題については当面復活する予定がないのに対して、英語民間4技能試験の活用については2024年度からの再導入が検討されています。予定通りに進めば、今年(2020年度)の中学2年生が大学受験する年から始まることになります。

大学入試の2年前ルール

大学入試には「2年前ルール」という約束事があります。大学の選抜方法を変更する場合は、入試の2年前までにその内容を受験生に公表しなければならないというルールです。

つまり、その入試を受ける可能性のある生徒が高校1年生のうちに、大学は変更内容を公表する必要があるということです。なぜなら、多くの高校では2年生から文理選択など進路にかかわる選択が始まることが多いため、それまでに必要な情報(選抜方式や受験科目など)を提供しておかなければならないからです。

また、各大学は入試の日程や方法を独自に決めることはできません。文科省が毎年決定する「大学入学者選抜実施要項」という共通のルールの枠内で決定しなければなりません。

実施要項は例年、入試前年の6月に各大学に通知されます。従来のセンター試験から共通テストに移行する年など、大学の選抜方法に大きな変化がある年には、2年前ルールのさらに1年前(入試の3年前)に「予告」という形で通知されます。

各大学が変更の2年前までに受験生にその内容を公表できるようにするためには、さらにその前に全体のルールを決めておかなければ各大学が選抜方法を決められないからです*。

*入試の前年になされた今回の相次ぐ延期や中止により、2年前ルールはその根本の部分で破られることになりました。ここにも、今回の騒動の大きな原因があります。

2020年度中の課題

2024年度に行われる入試についてはその3年前にあたる2021年度の夏頃までに予告を通知しなければなりません。予告準備の時間を考えると、新しい入試の大枠(方針)は2020年度中に固めておく必要があるのです。そのような事情から、新たに設置された「大学入試のあり方検討会議」でも今年度中を目途に意見を集約することになっています。

これから大学入試を受ける中高生や教育関係者の皆さんは、2024年度以降の大学入試のゆくえを危惧されていることかと存じます。現時点で具体的な方向性が決まっていない今、このコラムがひとまずは現状を知る手助けになれば幸いです。

次回は「大学入試のあり方検討会議」でどのようなディスカッションが行われているかを探ります。こちらをクリック▼

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