TOEFL(R) (Test of English as a Foreign Language)テストは、英語能力試験として1963年に開始されました。開始から半世紀以上経ち、このテストは大きな進化を遂げています。今回はTOEFLの歴史とともに、時代が求める「英語力」の変化について考えてみます。
目次
1960年代 TOEFLが誕生
日本国内では、1964年に初めてのテストが行われています。この年、東京オリンピックが開催され、東海道新幹線が開通しました。ビジネスでは、ソニーが家庭用ビデオテープレコーダーを発売しています。まさに、日本が高度経済成長に突入するという時代でした。
この頃、日本人が海外、特に英語圏で学ぼうとしたのは想像に難くありません。当時は全て紙のテスト(TOEFL PBT)でした。
1990年代 日本人受験者数が10万人を突破
日本の経済と歩調を合わせるかのように、TOEFLの受験者数は増え続けました。その頂点が、1990年代です。日本経済のバブルは崩壊し、受験者数もピークを迎えます。
この時期にハーバードMBAで学んだ方々が、今のビジネス界で華々しく活躍なさっていることは印象的です。
1990年代にTOEFLを受験し、ハーバード大学で学んだビジネスパーソンの方々
お名前 | MBA取得時期 | 肩書き |
---|---|---|
南場智子氏 | 1990年 | ディー・エヌ・エー 取締役 会長 |
新浪剛史氏 | 1991年 | サントリーホールディングス株式会社代表取締役社長 |
堀義人氏 | 1991年 | グロービス経営大学院大学学長、グロービス・キャピタル・パートナーズ代表パートナー |
御立尚資氏 | 1992年 | ボストンコンサルティンググループ日本代表 |
三木谷浩史氏 | 1993年 | 楽天株式会社代表取締役会長兼社長 |
肩書きは、2015年8月31日現在
2000年代 日本でペーパーからコンピューターベーステスト(CBT)へ
2000年に、日本でもPBTからCBTに変更され、コンピューターによるリスニングとライティングのテストが始まりました。CBTのセクション構成は、以下の4部構成で、PBTと同じでした。CBTに変わったとは言え、まずはPBTの内容をコンピューターに移管した形です。
1 | Listening |
2 | Structure(文法) |
3 | Reading |
4 | Writing |
ここまでのテストでは、英語の本質を考えると、その一部のみを評価していたと言えます。その証拠に、TOEFL(R) で高得点を取っても、留学先の大学や大学院では、「議論に参加しない、参加できない日本人」と言われ、大変苦労をした学生も多かったと聞きます。
つまり、国際的な試験を受けても、真の英語力を測ることができていなかったのです。当時の一般的な日本人の得点源は、「Structure」でした。
2006年7月 日本でTOEFL iBT開始 4技能を測る最終形態へ
2006年、日本にTOEFLの現在の形態である、iBTが導入されました。CBTからiBTに変わった際、大きな変化がありました。それは、試験の構成です。iBTの試験構成は、下記の4種類です。
1 | Reading |
2 | Listening |
3 | Speaking |
4 | Writing |
いわゆる「英語4技能」を測る試験となりました。ある種の最終形態と言えるでしょう。CBTまで存在した文法問題はなくなり、その代わりにSpeakingが新たに加わることになりました。
ここで多くの日本人は、これまでの学校教育の延長線上での英語学習では、TOEFLに対応できなくなったことに気づきます。Listeningまではなんとか対応できたとしても、Speakingは多くの学校教育や独学では難しい人が多かったのです。
しかしながら、TOEFLの考えは「留学生活で通用する真の英語力」を測ることにあります。そのためには、Speakingも含め、総合的な英語力を測定することが必要でしょう。なお、より現実的な英語力の測定を裏付けるように、ListeningとSpeakingセクションには、北米以外の地域のネイティブスピーカーによる英語の発音も含まれています。
TOEFL(R) 新時代 小、中高、そして大学入試へ
4技能の測定を成立させたTOEFLは今、試験の対象者を低年齢化して、受験者の幅を広げています。これまで大学、大学院の留学を目的とする人をメインにしていましたが、小中高生を対象とした試験を新たに導入しているのです。
対象 | 名称 |
---|---|
小学生~中学生のためのTOEFL(R) (3技能) | TOEFL Primary |
中学生~高校生のためのTOEFL(R) (2技能) | TOEFL Junior STANDARD |
中学生~高校生のためのTOEFL(R) (4技能) | TOEFL Junior COMPREHESIVE |
小学生が対象のTOEFL Primaryでも、すでに「読む」「聞く」「話す」の3技能を必要としています。
さらに大学入試で、大学独自の試験ではなく、TOEFLで受験可能な大学が、続々と増えてきました。AO入試や推薦入試ばかりでなく、一般入試でもTOEFLのスコアを活用することが可能になっています。
TOEFLで受験可能な大学、大学院のまとめ
試験の進化は求められる英語力の変化
TOEFLの進化は、グローバル時代の必然であろうと思われます。
試験の変化は、単純に言えばStructureがSpeakingに取って代わり、「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能になったということです。学生は、「読む」「書く」ができれば何とかなった昔と異なり、大学、大学院においても「話す」「聞く」を重視せざるを得なかったということでしょう。
これには、実際に会話をする機会がより増えてきた社会の要請があったのでしょうし、そのようなスキルがある人材を世界が求めているとも言えます。
グローバル化を促進した一因には、テクノロジーの進化があります。世界がネットワークでつながり、さまざまなデバイスを通じてコミュニケーションが可能になった今、「話せ」なければ社会で通用しません。大学においても、世界中の人々が集まる中で、自分を主張することができなければクラスに貢献できない、価値を出せない人材ということに他ならない時代となったのです。
TOEFL(R) の進化は、社会が、そして社会に人材を輩出する教育機関が、グローバルレベルで求める人材の変化を示していると言えます。
(参考) TOEFLのこれまでの歩みのまとめ
時期 | 内容 |
---|---|
1962年 | National Council on the Testing of English as a Foreign Language発足 |
1964年 | TOEFLテスト初実施(5セクション) |
1981年 | 国際教育交換協議会(CIEE)がETSの委託を受け日本事務局に (ETS: TOEFL(R)を含む約200のテストを開発している世界最大の非営利テスト開発機関) |
1990年 | 日本人受験者数が10万人突破 |
2000年10月 | 日本でTOEFL CBT開始 |
2006年7月 | 日本でTOEFL iBTテスト開始 |
2006年9月 | 全世界でTOEFL CBT終了 |
2007年11月 | 日本でTOEFL PBT終了 |
2011年 | 日本でTOEFL Junior Standard開始 |
2014年 | 日本でTOEFL Junior Comprehensive開始 |
2014年 | 日本でTOEFL Primary Step1, 2開始 |