11月8日に、大学入試センターが「新テスト実施企画本部」(6/1設置)における新テストの検討・準備体制に関する発表を行いました(下図)。
大学入試センターが「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」(以下、新テスト)に関する検討・準備体制を整備するのは、当然のことだと思われるかもしれませんが、実はそうとも言えない経緯があります。文部科学省が2016年3月31日に公表した「〔高大接続システム改革に掛かる〕最終報告」では、新テストの実施主体を「大学入試センター」とは明記しておらず、「大学入試センターを、〔…〕抜本的に改組した新センターとする」(「最終報告」62頁)と記載があるだけで、新センターの実態は未だに明確にはなっていないからです。
しかしながら、現実問題として、現行の大学入試センターの運営体制を無視して大規模となる新テストを実施することはできないでしょうし、何より新テストでは、国語や数学での記述式や英語四技能試験の活用といった新たな試みやが盛り込まれており、2020年度実施というタイトなスケジュールを考えた場合、研究やプレテストなど、諸々の準備が必要になるわけですから、新センターの母体となる大学入試センターとしても何もしないわけにはゆきません。そのような事情もあってか、大学入試センターは、2016年6月1日に「新テスト実施本部」の設置を発表し、新テストに必要な研究に着手し始めました。そして、8月31日に発表された「進捗状況」では、大学入試センターの中に「新テスト実施企画委員会」が設置され、より具体的に問題(ここでは数学と国語のみ)を検討するワーキンググループも設置されたことが公表されました。
今回発表された「新テストの検討・準備体制」では、「進捗状況」での発表に較べて、新テストに対する大学入試センターの関与がより明確に示され、また、問題を検討するワーキンググループ(正式には、「新テスト実施企画委員会」の「問題調査研究部会」にある部会)に、地歴・公民、理科が追加されています。
しかし、ここで勘のよい方は「英語がない」ことに気づくはずです。そうです、今回発表されたワーキンググループには英語が含まれていないのです。資料(図1)の右上「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」と書かれたセクションの「モデル問題」にも英語は登場せず、フィージビリティ(実現可能性)調査のところに「民間試験を活用した英語四技能評価の方法」という表記があります。
ワーキンググループについては、「今後随時、科目別WGを設置」とありますので、今後、英語が追加される可能性はあるでしょうし、「モデル問題」も、一部の教科目のみが記載されていると思われますので、英語については今後何らかの追加発表があるかもしれません。8月31日の「進捗状況」では、現行センター試験の英語(筆記とリスニング)を残す案も示されており、新センターが最終的に「どこまで」英語の作問をするかどうか定かではありませんが、今回の大学入試センターの発表の内容や、四技能試験の作問能力や実施に係る物理的問題に関するこれまでの否定的な見解などを考え合わせてみると、民間の四技能資格・検定試験のみを活用する可能性も十分にありそうです。