ついに3月末に最終報告がなされる高大接続システム改革ですが、昨年9月に発表された中間報告以降の議事録と配付資料を「英語に関する箇所のみ」要点をまとめてみました。文部科学省のHPに高大接続システム改革会議 議事要旨・議事録・配付資料として公開されていますが、そちらを全部読む前に、こちらのまとめ記事をご覧いただくと理解がしやすいと思います。
こちらのまとめは最終報告前の案である点にはご留意ください。
出典:文部科学省ホームページ 高大接続システム改革会議(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/064/index.htm)
目次
平成27年9月15日:高大接続システム改革会議「中間まとめ」
「高等学校基礎学力テスト(仮称)」について
- 各科目の出題範囲については、原則として、「国語総合」、「数学Ⅰ」、「コミュニケーション英語Ⅰ」を上限とし、履修した翌年度以降に受検することを基本とする
現行の学習指導要領において、全ての生徒が共通に履修する科目である「国語総合」「数学Ⅰ」「コミュニケーション英語Ⅰ」については、ほとんどの高等学校において、高校1年次の履修科目として開設されているが、2年次以降に履修する場合もあることを考慮しています。1年次で終了せず、2年次においても継続して履修しているような場合は、3年次に受検します。
- 英語については、「聞く」、「話す」、「読む」、「書く」の四技能をバランスよく育成することが重要であり、四技能を測ることができるテストを導入する。
「書く」がそれにあたると思われるが、記述式の導入に当たっては、採点者の確保や、採点に係る経費、採点の公平性、信頼性の確保などの課題もあるため、導入当初は、短文記述式を一部試行実施することを検討し、次期学習指導要領の実施に併せて一定の文字数を記入させる記述式の問題を導入する。
- 英語における四技能を測る問題等を導入することが必要であることから、CBTの導入を検討
同一テスト時間内において、問題の正答率に応じて、それ以降の問題の難易度を変えたりすることのできる適応型テストへの拡張が可能であり、様々な技能を測定しやすいCBTの導入について検討する。
- 受検料は1回当たり数千円程度の低廉な価格設定となるよう検討
ただし、英語四技能を測るテストを実施するためには、採点を行う者の人件費や研修費等において多額の費用が必要になることも想定されるため、実施費用面でコストを抑制する方策も併せて検討する。
- 民間の資格・検定試験の知見を積極的に活用することについて、民間団体との具体的な連携の在り方を検討
英語については、高校生が受検する民間の資格・検定試験が既に複数種類存在しているため積極的に活用する。
- 内容は学習指導要領に適合するとともに四技能を測るが、その際には、以下の観点から検討を行うことが必要
- 日本人の英語力の現状を踏まえた高等学校段階における基礎学力の定着度について四技能を測る観点から、測定しようとする能力が適切に把握できるかどうかなどテストの妥当性、信頼性が必要
- 現行の資格・検定試験については、その実施場所によって生徒に対する受検機会の差があることや、受検料が数千円から数万円程度となっていることなど、実施場所や費用負担などにおいて受検機会の更なる確保が必要
- 「高等学校基礎学力テスト(仮称)」が公的な性質を有するため、安定性・継続性が必要
テストのレベルの妥当性、全国で受けられるか、受験料が高すぎないか、継続運営できるかを重視しています。
「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」について
- 情報を的確に理解し、語彙や文法の遣い方を適切に判断し活用しながら、自分の意見や考えを相手に適切に伝えるための、思考力・判断力・表現力を構成する諸能力を評価
四技能を重視して評価されます。
- 「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」独自の問題作成を行うべきか、民間の資格・検定試験に全面的に委ねるべきかは引き続き検討
下記に留意する。
・次期学習指導要領及び現行学習指導要領との関係
・必要な水準の確保等 ・入学者選抜としての妥当性(把握しようとする能力が適切に測定されているか、また、その測定値が適切に活用されているか)や信頼性(例えば、各回の試験結 果が一貫するような問題作成方法や評価基準が提示されているかなど。)
・ 適正かつ公正で透明性の高い試験実施体制(セキュリティや不正対策も含む。)
・ 費用負担の在り方や受検機会の確保
・ 継続性・安定性の確保
平成27年10月28日:高大接続システム改革会議(第7回)
- 新たな資格・検定試験を開発するなど,高等学校で学習した英語の能力を適正にはかるための方策をとっていただきたい
「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」についての全国高等学校長協会からの意見です。現行の英語の資格・検定試験は受検料が高額、学習指導要領で示された内容を必ずしも包括したものではないなどの課題があるため。
- 四技能を教えるということはもう既に今の学習指導要領の根幹にあるわけですから、それをやることによって逆に指導要領に沿ったより正規の教え方に変わるのではないか
従来の二技能から四技能へ変化するときに外部試験を活用する場合、高校現場で外部試験にどれだけ対応できるか、また教育の現場において資格試験対策が必要になってしまうのではないかという懸念に対する吉田委員の意見です。
- 英語については記述,ライティングも,あるいはスピーキングも時間を掛けて外部検定でやれるのだろうとみています
長塚委員の意見です。アルファベット文化の諸外国でCBT-IRTを用いた実践が行われているので、全科目のうち英語だけが先行している。しかし,他教科においては,本当にできるか懸念。
平成27年11月30日:高大接続システム改革会議(第8回)
特になし。
平成27年12月22日:高大接続システム改革会議(第9回)
- 「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の記述式については英語(4技能)と同一日程での実施も検討
これまでのように1月に実施していては採点期間が確保できないためです。
- 英語四技能試験は、新センターが基準を示し、民間が作問(原案)・実施・採点を行う体制を検討
一つの案として挙げられています。
- 高等学校においても英語を学ばせるだけではなく、英語で他教科を学ぶ機会を増やしていくこと、大学教育においても日本人学生と外国人学生が共に同じ教室で学べるように英語による講義を増やすことなどの、国際的な視点でのカリキュラム・ポリシーの見直しも論点とすべき
「中間まとめ」では、民間の資格・検定試験の知見を積極的に活用するなどの「四技能を測ることができるテストの導入」という観点が論点の中心となっており、英語技能が高大接続を経て、大学におけるグローバル人材の育成につながるものとして捉えられてはいない、との意見です。
平成28年1月29日:高大接続システム改革会議(第10回)
- 「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」は話すことについては、録音機能のついた電子機器(ICレコーダやタブレット型PC等)による音声吹き込み試験とすることが考えられる
特に環境整備や採点の観点から、平成32年度当初からの実施可能性について十分検討としています。
- 「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の英語の多技能を評価する問題は、記述式問題と同日に同一会場で実施することも考えられる
受験者や大学の負担の軽減、採点期間の確保などの観点から、多肢選択式を中心とする試験とは別日程で実施することも検討
平成28年2月17日:高大接続システム改革会議(第11回)
- 「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の「英語」の試験については、どこまでをCBT方式で実施することが適当かについて個別の検討が必要
仮にCBTで実施することになった場合には、「話す」に関する問題の出題/解答を、どのように行うかといった課題や、「書く」や「話す」など、最終的に人による採点が必要となることによる、採点人員の養成・確保の課題がある。
平成28年2月24日:高大接続システム改革会議(第12回)
- 「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の一例としては、Eメールや手紙などにおいて、求められている情報を適切に書いて伝えることができるか。英語の掲示や取扱い説明書等から、必要とする情報を取り出し、目的を達成することができるか。など
こちらはあくまで問うている力が生かされる場面の一例であり、その場面設定で出題されるとは限らない。
平成28年3月11日:高大接続システム改革会議(第13回)
高等学校基礎学力テスト(仮称)の問題作成イメージが開示されました。
- 「書くこと」について技能統合型で問う出題形式と、難易度(CEFR規準)のイメージを示すための問題例
CEFR:Below A1-A1のレベルの問題例として、写真にうつっている3つのことをEmailとして20–30 wordsで書く問題が提示されています。
- 「話すこと」について技能統合型で問う出題形式と、難易度(CEFR規準)のイメージを示すための問題例
Part 1AはCEFR:A1-A2のレベルで、名前とどこから来たかをとう問題が提示されています。Part 1BはCEFR:A2のレベルで、自由時間と学校について、Standard questionsとExtended responseが提示されています。なお、「話すこと」の試験については様々な実施形態を検討中であるが,この問題は試験官1名―面接者1名の方式を想定しているとのこと。
高大接続システム改革会議「最終報告」(案)が公開されました。
「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の導入>CBTの導入
- 四技能を測定することが求められる英語については、「話す」に関する問題の出題・解答をどのように行うか等、どこまでをCBT方式で実施することが適当かについて個別に検討が必要であり、実施方法については、現在議論が進められている全国学力・学習状況調査での英語調査の導入の検討を参考にしつつ、試行実施期までの準備期間における取組を通じて確定していく。
「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の導入>英語の多技能を評価する問題の導入
- 四技能のうち「話すこと」については、録音機能のついた電子機器(例えば、ICレコーダやタブレット型PCなど)による音声吹き込み試験とすることが考えられるが、特に環境整備や採点等の観点から、平成32年度当初からの実施可能性について十分検討する必要がある。
- これらのほか、大学入学者選抜全体として英語の四技能の評価を重視する観点から、各大学の判断により、民間の英語の資格・検定試験について、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の英語の代替として活用したり、個別選抜において活用したりすることも有効である。
- 今回検討を進めている「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」では、前述のように、マークシート式問題に加え記述式問題や英語の多技能を評価する問題を導入することによって、これまでの共通テストより以上に、学力を多面的・総合的に評価する新たな枠組みを提供することを狙いとしている。特に「記述式問題」については、別日程とすることを含めて検討している。こうした新たな枠組みが提供されることとなれば、1回の共通テストで教科の知識を基盤とした学力を1点刻みで評価するこれまでの枠組みを改善するという議論の狙いが相当程度実現すると考えられる。このことを踏まえると、こうした新たな枠組みの検討を第一義とし、そのために必要な各論点に関する検討・実施の状況を見極めつつ、同種のテストを複数回実施することについては、日程上の問題や、CBTの導入や等化等による資格試験的な取扱いの可能性などを中心に、引き続き検討することが適当である。
平成28年3月25日:高大接続システム改革会議(第14回)
改革の実現に向けた今後の検討体制等が公開されました。
「高等学校基礎学力テスト(仮称)」について
- 平成31年度からの試行実施期に向け、平成29年度初頭には「新テストの実施方針」(対象教科・科目の出題内容や範囲、記述式及び英語の実施方法と実施時期、プレテストの実施内容、正式実施までのスケジュール等)を策定・公表するとともに、平成30年度初頭を目途に、より具体的な実施内容を示す「実施大綱」を策定・公表する。
「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」について
- 平成32年度からの実施に向け、平成29年度初頭には「新テストの実施方針」(対象教科・科目の出題内容や範囲、記述式及び英語の実施方法と実施時期、プレテストの実施内容、正式実施までのスケジュールなど)を策定・公表するとともに、平成31年度初頭を目途に、より具体的な実施内容を示す「実施大綱」を策定・公表する。
英語に関する論点のまとめ
英語に関する論点をまとめると、下記が挙げられます。センター試験に代わる新テストは50万人が受験することを前提にする必要があるため、実現可能性が問題になっています。
- 民間の外部検定試験を活用するか、国と民間で新たな試験を新規で作成するか
- 試験はCBTで行うか、紙ベースで行うか
- スピーキング問題は面接とするか、録音にするか
- スピーキングの実施年度は1年遅らせるのか
- 受検料をいくらにするか
- 実施回数を複数回にできるのか
- 実施時期は記述式とマークシート式も含め同日か、別日程か
- 実施場所は全国で格差がないように実施できるのか
- 4技能の配点は均等か
これらは最終報告では決定されず、2017年度初頭の「実施方針」で策定・公表されるようです。