【高校の英語が変わる】第5回〜新しい大学入試への対応〜

ここまで第1回〜4回にわたって、これからの日本の英語教育と大学入試の変化についてお伝えしてきました。最終回となる今回は、このような変化に対して受験生が備えるべきこと、新しい大学入試への対応について考えてみます。

第1回大きな改革のうねり
第2回英語教育はどう変わるのか
第3回高校英語の変化
第4回大学入試が変わる影響
第5回新しい大学入試への対応

新しい大学入試への対応

現在の高校1年生(2019年1月時点)からは、新しい大学入試である「大学入学共通テスト」への対応が必要となります。

現在の「大学入試センター試験」は、大学受験者の約8割が受験しており、国公立大学のみならず、私立大学のさまざまな選抜でも活用されています。「大学入学共通テスト」は国公立大学受験では必ず必要となりますが、どれくらいの私立大学が、どのような活用をするのかはまだわかりません。とは言え、幅広く活用されている「センター試験」から「共通テスト」に変わることで、私立大学での活用が急速に減ることは考えづらく、現在とほぼ同じ位置づけになるのではないかと予想されます。したがって、現在同様、私立大学志望者を含めた多くの受験生は、新しい共通テストへの対応が必要となりそうです。

※「大学入学共通テスト」の詳しい内容については、「大学入学共通テスト」試行調査の目的を参照してください。

民間4技能試験への対応

そして、新たに追加される「民間4技能資格・検定試験」への対応です。こちらについても、国公立大学は既に活用の方針を示しています。ここでも問題は、私立大学の対応です。私立大学にとって、受験生の数を確保することは入学者の質を保つ上で重要であるばかりでなく、受験料収入も大学にとって重要な運営資金となっています。したがって、受験生が減るような対応は極力避けるのが普通です。現在の大学入試センター試験や私立大学が独自に実施している入試の英語試験に比べると、4技能でバランスよく得点しなければならない「民間試験」は明らかに負担が増加します。したがって、「大学入学共通テスト」を選抜に活用する私立大学の多くが大きな負担を強いる「民間試験」の受験を必須とすることは考えづらいのです。

おそらく必須受験とするのではなく、多様化している私立大学の選抜方法のひとつに「民間試験活用型」といった形で加えることで、トータルの受験者数を確保したり、増やそうとしたりするのではないかと考えられます。そうすると、民間試験については、国公立大学志望者(私立大学併願者を含む)と私立大学の「民間試験活用型」入試を志望する受験生が対応を検討することになります。

大学入学共通テストと民間4技能試験

ここで問題となるのは、2つの試験(大学入学共通テストと民間4技能試験)で問われる英語力は同じなのか、別物なのかという疑問です。実は「民間試験」といっても、「大学入学共通テストの枠組みにおける」民間試験(要するに、共通テストの一部として活用される民間試験という意味です)はひとつだけではなく、多数の種類の試験があります。それぞれの試験は、そもそも異なる活用目的にそって作られているため、試験の内容・レベル・形式もさまざまです。したがって、「共通テスト」と「民間試験」を単純に比較することすら難しいのが現実です。東京大学などが活用に否定的な見解を示しているのは、この部分で「公平性」が保たれるのか疑問と考えているからです。とはいえ、他の教科の対策もあるため、英語の勉強にばかり時間を割くわけにもいきません。できるだけ2つの試験を合わせた形で、無駄なく対策を検討したいところです。

さらに問題となるのが、この2つの試験の実施時期が異なるため、「いつまでに、どんな準備をしたらよいのか」についても判断が難しいことです。大学入学共通テストは高3の1月中旬に実施される予定ですが、「共通テスト」の一部として「民間試験」を受ける場合には、高3の4~12月に実施される試験から2回まで受験することが認められています。実際の試験日程は各試験によって異なりますが、受験生としてはできるだけよいスコアを取りたいでしょうから、準備期間が少ない早い時期の受験は避けるべきではないかと考えられます。

このように、「共通テスト」と「民間試験」を併用することで、両試験の対策をどれだけ兼ねることができるのか、さらに両試験の時期の違いから生じる対策スケジュールのずれをどれだけ小さくできるのかといったことがポイントとなりそうです。

いまからできること、いまから始めておくべきこと

受験対策を考えるには、具体的な志望校を決め、その大学がどのような選抜方法を取るのかという情報が必要となります。

先にも述べたように、現状選抜方法の詳細を明らかにしている大学は国公立大学・私立大学を合わせても一部でしかありません。したがって「いまできること」としては、確実な情報にもとづく対策は少ないですが、必ず必要になる部分(たとえば、単語や熟語などの語彙数を増やすことや基本的な文法を習得すること、Readingに偏りがちになる勉強を4技能のバランスのとれた勉強に変えることなど)を中心に、高1までに習った内容を後の学年に持ち越さないで、早く完成させておくこと、つまり「いまから始めておくこと」が重要なのです。

また、入試として使われる民間試験は高3時のものに限られていますが、練習として受験するのは今からでも可能です。どの試験では、どんな試験内容や形式で行われるのかを早く体験しておくことは、これからの対策を考える上でも非常に有効です。

大学入試のシステムに大きな変更がある場合、その影響は数年続くのが一般的です。2020年の入試が実際にどのようになっても、後で「そんなはずじゃなかった」と言わなくてもよいように、幅広い可能性の中で考え、できるだけの対策をしておきましょう。

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