第2回「英語教育はどう変わるのか」では、小学校から高校までの英語教育について全体としてどのような変化が考えられるかお伝えしました。第3回では、今後高校の英語教育が具体的にどう変化するのかについて考えてみます。
高校英語の変化
高校の英語の授業
「新学習指導要領」に移行すると、高校の英語の授業構成は下図のように変わります。
<英語の授業構成 比較>
「新課程」では、総合的な英語学習の科目である現在の「コミュニケーション英語」(基礎・Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)が「英語コミュニケーション」(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)に集約され、英語による発信力を高める「英語表現」(Ⅰ・Ⅱ)および「英語会話」が「論理・表現」(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)に改編されます。単独技能に特化した「英語会話」がなくなるのは、「4技能統合」を重視する方針の表われと考えられます。
大学進学希望者が多い高校では、現在「コミュニケーション英語」(Ⅰ~Ⅲ)と「英語表現」(Ⅰ・Ⅱ)を履修するカリキュラムが一般的ですが、新課程で「英語コミュニケーション」(Ⅰ~Ⅲ)および「論理・表現」(Ⅰ~Ⅲ)を履修すれば内容的にも、単位数でもほぼ同条件になります。
「英語コミュニケーション」のねらいと内容
現行課程の基本科目である「コミュニケーション英語」は、新課程で科目名が「英語コミュニケーション」に変わります。よく似た科目名ですが、前者が「コミュニケーションのための英語」といった意味合いがあるのに対して、後者では「英語でコミュニケーションする科目」という含意が感じられます。
と言うのも、新学習指導要領の大きな特徴として「主体的に学習に取り組む態度」を重視しており、そのためには「主体的・対話的で深い学び」(いわゆる「アクティブ・ラーニング」)を繰り返すことが重要であるという考え方が貫徹されているからです。
これまでが活用できるような知識や技能を習得することに授業の重点が置かれていたのに対して、新課程では知識や技能を習得するだけではなく、授業自体を活用の場にするという考え方です。
この点については、学習指導要領を見ても、現行が「コミュニケーションの基礎的な能力を養う」と記されているのに対して、新課程では「日常的な話題について…できる」「社会的な話題について…できる」というように、具体的な知識や技能が使えるようになることを目標としているところにも表われています。新課程では「何を知っているか」ではなく、「何ができるか」が重要になります。
英語でのコミュニケーションにおける、具体的な技能の多様化
また、新課程では英語によるコミュニケーション能力の具体的な技能も多様化します。下表は、新学習指導要領で必修となる「英語コミュニケーションⅠ」における言語活動で習得すべき技能の例をまとめたものですが、表中の赤字は旧課程から追加されている技能です。
従来コミュニケーションでは主に「情報の伝達」や「感情の共有」が目標とされていましたが、新課程ではさらに積極的なコミュニケーションである「提案」「交渉」までも視野に入れていることがわかります。
言語の働き例 | |
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コミュニケーションを円滑にする | 相づちを打つ/聞き直す/繰り返し/言い換える/話題を発展させる/話題を変える |
気持ちを伝える | 共感する/褒める/謝る/感謝する/臨む/驚く/心配する |
事実・情報を伝える | 説明する/報告する/描写する/理由を述べる/要約する/訂正する |
考えや意図を伝える | 提案する/申し出る/賛成する/反対する/承諾する/断る/主張する/推論する/仮定する |
相手の行動を促す | 質問する/依頼する/誘う/許可する/助言する/命令する/注意をひく/説得する |
今回のまとめ
今回は、高校の英語教育が「使える英語を学ぶ授業」から「英語を実際に使ってみる授業」に変わり、その内容もより複雑になる可能性について見てきました。次回は、高校英語がそのように変わると、どのような影響が考えられるのかについて考察します。
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