英語能力指数の調査レポート結果
世界各国の受験者のデータ
世界116カ国で海外留学・語学教育事業を展開するイー・エフ・エデュケーション・ファーストは11月2日、英語能力を国際的に比較調査した「EF EPI英語能力指数2018年版」を発表しました。
この調査は任意参加形式でオンライン受験した試験の結果から、国・地域別、主要都市別に英語力をランキングしているほか、業種別・職位(役職)別・職務(担当業務)別、男女別、年齢別など、より詳細な分析を行っています。今回は調査対象国が昨年にくらべ8カ国増え、全88カ国・地域から約130万人の参加者がありました。試験は、読解力とリスニング力を試す内容となっています。
提供: EFエデュケーション・ファースト/EF EPI英語能力指数2018年版 |
アジア各国の英語力
レポートによると、今回スウェーデンが3年ぶりに世界ランク1位になったほか、シンガポールがアジア圏では初めてとなるトップ3にランクインしました。世界全体として英語力は徐々に向上する傾向にありますが、アジアに関しては伸びが見られませんでした。また、業種や職務(担当業務)によって、英語力に大きな偏りが見られます。
日本の英語能力指数は、昨年より0.54ポイント落として51.80(100点換算の偏差値)で、全88カ国中49位(昨年80カ国中37位)、アジア21カ国中11位(昨年20カ国中9位)とそれぞれランキングを落としています。
男女別では、女性の平均が54.11(世界平均は54.57)であったのに対して、男性の平均は49.90(世界平均は52.63)で、男性の方が世界の英語力との差が大きくなっています。なお、女性の方が高いのは世界的な傾向でもあります。
日本人の英語力は低い
また日本の国際順位は、このランキングが初めて公表された2011年から8年連続で低下しています。
日本では近年英語教育の改革が次々と実施されていますが、今回の結果を見る限り、その効果は見られません。同調査の受験者で最も多いのが20歳代となっているため、まだ改革の影響が表れていないとも言えます。
しかし、そもそもこの試験には日本人が苦手とすることから現在の改革で重点が置かれているスピーキングやライティングは含まれていません。比較的得意と思われていたリーディングやリスニング力も、実はそれほどではなかったということになります。
同レポートはアジア全体の傾向として、投資額に比べて教育効果が低い点を指摘しています。また、教員の指導・研修が不十分なまま必修化される日本の小学校の英語教育に対しても、その効果に懸念を示しています。
英語を使う仕事
ともすれば日本だけを視野に議論されがちな英語教育ですが、このレポートは、アジア(特に東アジア)というより大きな視点からもこの問題を考える必要性を示唆しています。業種・職務(担当業務)別の傾向としては、メディア、金融、農業、情報技術、コンサルタント関連、旅行などの業種や、法律、経営、IT部門などの職務で特に英語力が高くなっています。
農業と英語
この中に農業が入っているのが奇異に感じられるかもしれませんが、いまや産業としての「農業」は法人化が進み、農家という個人ではなく、企業としての交渉力が求められています。農産物とその加工品は自国民を対象とした内需型の商品であることにとどまらず、海外向けの重要な輸出品となっています。また、海外観光客の増加に伴い、観光農園でお土産を販売する際は、英語を使えた方が有利となることでしょう。
ニュースやドキュメンタリー番組で、農業とITを繋いだ取り組みを目にすることが多いですが、バイヤーが世界各地の農家にまで直接出向いたり、インターネットを介して買い付けることは当然のことになっています。今までは自国で収まっていた農業が、世界に開かれているのです。意外にも、いま個人レベルで英語が必要になっているのは農業なのかもしれません。