高知大学「土佐さきがけプログラム国際人材育成コース」とは?

高知大学「土佐さきがけプログラム国際人材育成コース」とは?

2017年度、高知大学は「土佐さきがけプログラム国際人材育成コース AO入試」において、英語の資格・検定試験を活用しています。指定された資格・検定試験での取得級やスコアに応じて、小論文(英語)の成績に得点が加点されるというものです。入試に民間英語4技能試験を活用した背景や、土佐さきがけプログラム国際人材育成コースの概要について、副コース長の柴田雄介教授にお話を伺いました。

英語の資格・検定試験を入試に活用するねらいとは、どのようなものでしょうか。

現在、大学独自の英語試験をなくし、外部試験を取り入れようという動きが全国各地の大学で見られます。高知大学も例外ではなく、英語外部試験を試験的に導入しようと考えました。特にこだわったのは「加点制度」という点です。英語の資格・検定試験を出願条件として活用している大学が多いのですが、高知大学は前向きな意味での活用をしようと思いました。

英語外部試験を入試で積極的に活用する「土佐さきがけプログラム 国際人材育成コース」とはどのようなコースなのですか。

2012年にスタートした「土佐さきがけプログラム」は、特定の学部に所属しない独立した教育プログラムで、様々な分野の学問を横断的かつ総合的に学ぶことができます。幅広い知識とその活用能力を身につけることで、坂本龍馬のように「時代を先駆ける人材」を育成することを目標として、設置されました。「国際人材育成コース」は、このプログラムで設置されている4つのコースのうちの一つです。このほか設置されているコースとしては、グリーンサイエンス人材育成コース、生命・環境人材育成コース、スポーツ人材育成コースがあります。
国際人材育成コースはグローバル化に即応するもので、重点を置いているのは語学力と異文化理解・国際コミュニケーションの実力です。言語としては英語、日本語、中国語を三本柱としています。当コースには2つの出願パターンがあり、A出願は日本の高校で過ごした受験生向けで、B出願が日本への留学生向けなのですが、B出願の受験生は全体の15~20%ほどです。このように、共に学生生活を送る仲間に留学生がいること自体が、異文化理解につながっていると感じます。もちろん、日本で生まれ育った学生と留学生にはそれぞれ違ったカリキュラムが用意されており、日本で生まれ育った学生には高知大学の海外協定校へ1年間留学することが義務付けられています。その目的は語学留学ではなく、現地の学生と共に専門科目を学ぶことです。留学先は、1期生を例にとるとスウェーデン、オーストラリア、マレーシア、韓国、中国と様々です。その他にも、海外インターンシップへ参加することができます。一方留学生は、日本国内でインターンシップを行います。また、募集定員が例年10人という少人数教育体制も、特徴の一つとなっています。

柴田先生ご自身の、英語教育への考え方をお聞かせください。

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学習者の皆さんが授業などを通して英語に触れる時は、アメリカ英語であったり、イギリス英語であったりと様々で、発音の違いに混乱してしまうと思います。それと同時に、英語には様々な種類があることに気がつくでしょう。また、人によって英語学習のゴールも違います。教養として英語を学びたい人と、英語を使って海外で活躍したい人では学習の方法に差が出てくるでしょう。このように英語には様々なモデルが存在し、十人十色のゴールがあるにも関わらず、その人に最適な学びができる環境が整備されていないように思います。教育環境が整っていないため、このままでは日本で英語教育を受けた人が専門科目を英語で理解できるようになるのは難しいのではないでしょうか。また、誰もが英語を使えるようになってほしいです。ペンを握ると文字が書けるように、英語は、誰もが備えておくべき能力だと思います。世界を股にかけて何か専門的なことを行えるグローバルな人材を育てるには、大学に入ってから英語に力を入れ始めるのでは遅いです。高校までに英語力をつけておき、大学では英語を使って何かをできるようにするというのが、私の理想です。そのためには、英語教育の改革が必要です。入試においても、未だにマイナーな単語の使用や重箱の隅をつつくような問題の出題がされていますが、英語教育を変えていくためには受験システム自体を変えるべきだと思います。

最後に、受験生と受験生を指導する教員の皆さんへのメッセージをお願いいたします。

受験生の皆さんには、英語の習得を最終目標にしないでほしいと思います。ビジネス、建築、音楽など、自分のしたいことを見つけて、そのために必要ならば、英語を学ぶべきです。英語は手段であって目的ではないということです。イギリスに留学した時に感じたのですが、英語を学ぶために留学し語学学校で学んでいた人よりも、他の学問の習得や夢の実現のために英語を学びに来た人の方が、英語力が伸びていたように思います。つまり、具体的にやりたいことがあって、そのために必要だと感じたときほど英語力がつくということです。これらを踏まえて、教員の皆さんは「なぜ英語を勉強するのか」をもっと教えるべきだと思います。英語を手段として世界で活躍している人の講演会を開くなどして、英語がなぜ必要か、またはなぜ英語を学ぶのかを生徒に感じさせる教育をしていただきたいです。やみくもに英語をやれと言っても生徒のモチベーションは上がりません。英語は伝わるかどうかが大事です。受験生の皆さんには英語を使いたい、英語で伝えたいと思う気持ちを大事にしてほしいし、教員の皆さんには英語を使おうという意欲を伸ばす教育をしていただきたいです。

インタビュー後記

今回は、2017年度の入試で英語外部試験を活用している高知大学を取材しました。国立大学にもかかわらず、「土佐さきがけプログラム国際人材育成コース」では全員留学という制度が印象的でした。「4skills」は今後も高知大学を応援していきたいです。

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