4skillsを運営する「オンライン英会話ベストティーチャー」のバイリンガルスタッフが、IELTSの専門家であるドン・オリバー先生にインタビューいたしました!インタビュー前半では、ドン先生がIELTSに関わってきたキャリアや、日本の英語学習者へのアドバイスについて伺いました。後半となる今回はIDPの取り組み、IELTSの特徴と対策、IELTS作成のウラ側についてお訊きしました。
目次
IDPとIELTSの歴史
ここからはIDPとIELTSについてお訊きしたいと思います。
IDPで経験された中で、1番チャレンジングだったことは何ですか?
そうしたら、まずIDPの背景について説明することにしよう
IDPはもともと、オーストラリア国内の複数の大学が結成した組織だったんだ。海外で留学生向けのプログラムを提供して、オーストラリアの大学をアピールするためにね。
今でも複数の大学がIDPの半分を所有しているけど、この10年でIDPはさらに活発な民間企業になってきた。IELTSを提供するだけの組織から、学生がIELTSでよい結果を出すためのサポートに力を入れるようになったんだ。
今はIELTS対策用の教材を作っているよ。ライティングアシスト、リーディングアシスト、スピーキングアシスト、あとは私が受験者にアドバイスするビデオ。これらすべてがチャレンジングで、とても楽しかった。
英語を話さない人が英語力を培うお手伝いをする感じですね。
この30年でIELTSも進歩してるんだ。試験内容を変え、コンピュータで受験できるようにし、セキュリティも強化した。不正が起これば試験が無効になるし、IELTSの信用を落とすことになるからね。
だからIELTSはセキュリティに力を入れていて、成績証明書には実際に試験を受けた人の顔写真が入るようになっているんだ。大学側が結果を確認できるしくみもある。セキュリティの強化に関しては私がIELTS Expertとして何年も関わってきている仕事のひとつだよ。
情報漏洩が企業のブランドを傷つける時代なので、セキュリティは大事ですよね。
IELTS特有の「なぜ?」を問われる課題の対策法
IELTSでは、受験者が自分の意見を述べる課題が出ますよね。
英語の実力テストの多くは、ただリスニングを聞いたり、情報を要約したりする場合が多いので「これについてどう思いますか?」と聞くのはIELTSの特徴だと思います。
自分の意見を表現してきた経験が少ない生徒にとっては難しいはずだ。文化によっても違うし。
私は子どもが4人いて、何についても意見を言いたがる。あまり物事を知らなくても、とりあえず思いを共有したがるんだ。たまにそれが問題になるけど(笑)
オーストラリアの教育制度では、小さい頃からそうやって意見を言うことが推奨されるけど、すべての国がそうとは限らないよね。
IELTSでは、さまざまな目的のために英語を評価するんだ。スピーキングテストは日常に関する簡単な質問から入って「なぜ?」を尋ねられる質問へと難易度が上がっていく。
「どんな服を着るのが好きですか」という質問には「Tシャツとジーンズを着るのが好きです」と答えやすいよね。
でも「なぜ?」と聞かれたら難しい。理由なんて考えたこともないと思うから、世界を見る際の概念を広げないといけない。
IELTS受験者は自分自身に「なぜ?」と質問するといい。「なぜオニギリが好きなのか?」とか「なぜ青色が好きなのか?」とか。
自分自身について「はい」か「いいえ」で答えられる質問から始めて、徐々に抽象的な質問に移っていくと良いですね。
IELTSを受験するメリット
IELTSを受験するメリットは何でしょうか?
毎年、350万人以上が140カ国でIELTSを受験しているんだ。1万以上の機関が関わっていて、その内約3500の機関はアメリカにあるんだ。
つまりIELTSは世界中の大学進学や国によっては移住などにも使うことができるのがメリットだ。オーストラリアにも海外から医者や会計士など専門職の人が来る際、IELTSが英語力の証明書になる。IELTSのスコアは国際的に理解されていて、デンマークやブラジルの雇用主においてもスコア6.0と7.0の違いがわかるんだ。
級ごとにテストのレベルが異なる英検®️などと違って、IELTSはすべての英語レベルの人が受験できるし、スコアをもらって自分の英語力を証明できる。TOEFLのように。
そしてさっきも言ったように、IELTSは自分の意見を述べるのを推奨していて、あらゆる目的のために英語でコミュニケーションする力を付けることができる。
IELTSの結果をどのように役立たせるべきでしょうか。
IELTSには合否がないから、スコアをどのように利用したいかによるね。
オーストラリアのお肉屋さんで働くにはスコアが4.5ないと就労ビザがもらえない。お肉屋さんは4.5と低めのスコアだけど、医者が英語圏で働くには7.0が必要だし、教師は8.0が必要、学生ビザを取るには5.0~6.0が求められる。
スコア以外で役立つのは、それぞれのバンドスコアについての説明や採点基準を知ることだ。スピーキング5.0の人ができていることと、6.0の人ができていることの違いが明記されているから、自分に何が足りないかわかるはず。
採点基準に沿って考えると、ライティングで5.0をとった人は質問にちゃんと答えていなかったのかもしれないし、スペルミスがあったのかもしれない。リスニングとリーディングで6.0を取るためには、正解数が23ないとダメ、とかね。
採点基準がクリアであること、英語力を上げるために何をすべきか明記されているのはIELTSの良さですね。
たまに、英語を充分勉強しないでIELTSを受けて、いきなり希望のスコアが取れると期待している受験生もいるから、落ち込んでいる彼らをサポートするのも私の仕事なんだ。
実は、彼らの中には問題なく英語を話せる人もいて、中には英語ネイティブもいる。だけどスペルミスがあったり、句読点が正しく使えていなかったりするから、英語力を上げないと希望スコアは取れないんだよって説明するんだ。
言語にはルールがありますからね。
IELTSのスピーキングとライティングは明確な採点基準があって、ネイティブスピーカーもすべての面で優れているとは限らない。でも求められていることはハッキリしてるから、対策しやすい。
「これをすれば良いスコアを取れますよ」と決まっているのがIELTSのよさでもあるかな。
IELTS最大の魅力はスピーキングテスト
この質問には既にお答えいただいたと思いますが、改めて、他の国際的な英語力試験と比較したときに、IELTSの強みは何でしょうか?
一つ大事なことを言い忘れていたけど、IELTSの強みは対面式のスピーキングテストなんだ。
パソコンへの吹き込み式の英語力試験もあるけど、実際に人と人が話す方が妥当性が高いんだ。だってコミュニケーションって人と人が話すことでしょ?(笑)
対面なら受験者が聞き返すこともできるし、面接官が受験者に時間を与えることもできる。
もし誰かが答えに詰まっていたら、ちょっと待ってあげたり、違う言葉でもう1度聞き返したりするよね。
普段のようにコミュニケーションを取る方法で受けられるのがIELTSのスピーキングテストなんだ。
実際に人と人との関わりがあるテストが受けられるのはとても大事ですよね。
IELTS作成のウラ側
IELTSは言語評価の専門家の知見をもとにデザインされていると聞きました。この専門家とはどういう方たちなのでしょうか。
IELTSはもともとケンブリッジ大学英語検定機構が作成していて、長い歴史を経て国際的な試験になったんだ。
現在IELTSを作成している人たちは、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、世界中から集まっている英語教育のベテランたちだよ。
そして、作られた問題は実際に世に出す前に、試作品としてテストされる。100〜200人の生徒がWritingの試作問題をといた際、2割の人がタスクの指示を誤解したり、文字数が足りなかった場合は、試作問題を改定するか、ボツにするんだ。
IELTSの問題がリリースされる前に200人が試しに受けるんですね!すごい!
そう、しかも世界各地で受けてもらうんだ。ブラジル、日本、ベトナム、ドイツ….文化によって理解に差が生まれないようにね。
英語を話す人には理解できる問題でも、アラビア語を話す人には理解できない問題がないようにしているよ。
そんなふうに企業努力されていることは、もっと広まって欲しいです。
IELTSは過去30年、言語研究に関するさまざまな調査もして、問題作成に役立てているんだ。
世界中の研究者に出資して、「手書きとタイピングの解答に差は出るか」「面接官が男性で受験者が女性だった場合、試験に影響は出るか」「IELTSを通して大学で成功できるかを予想できるか」などたくさんの調査をしている。IELTSの信頼度を高めるためにね。
調査結果はウェブで見れるから、興味がある人はチェックしてみるといいよ。
IELTSの今後
今後IELTSはどのように変わっていくと思いますか?
あまり詳しくは教えられないんだけど、IELTSはこれからも進歩することは保証するよ。それがIELTSの歴史だからね。
最初言ったように、私がIELTSに関わり始めた1990年はまったく別物だったIELTSが、長い年月をかけて妥当性を高めてきたんだ。
受験者が「取得するスコア」は「取得すべきスコア」であって、もし次の週に再受験しても同じスコアになるべきなんだ。もしそうならない要素が見つかった際は試験も変わるんじゃないかな。
今は本当にそれくらいのことしか言えないよ。
今までに変化した点を挙げてもらうことはできますか?
そうだね。IELTS(International English Language Testing System:編集注)はもともと「I」がなくて「ELTS」と呼ばれていたんだ。
当時はオーストラリアの大学に入るためのテストだったから、オーストラリアの影響を受けていたし、形式も3つあった。科学、人文科学….もう1つは忘れちゃったけど。リーディングとライティングも繋がってた。
でもその形式がうまく機能しないことに気づいて、理系や文系を問わない一般的な学問に関する試験になった。リーディングとライティングも別々にして、採点しやすくした。
数年後、移民や就業のために、学問に関わらず英語力を測れるテストが必要だと気がついた。それが発展して、今のGeneralモジュールになったんだよ。
さらにその後、スピーキングテストに妥当性が不足してると感じてまたテストを変えて、スピーキングとライティングの採点基準も変えた。
こうしてIELTSはずっと進歩してきたし、これからも進歩し続けるよ。完璧な試験はないけど、専門家たちがより良いテストに近づけたいと願っているんだ。
IELTSの変化について教えていただきありがとうございます。IELTSの歴史からは誠実さが垣間見えますね。
以上でインタビューは終了です。
ドン先生、本日は本当にありがとうございました!
ありがとう!
とても楽しかったよ!
まとめ
IELTSを受験するメリットとしては以下を挙げられていました。
・合否がないのでどんな英語レベルの人も受験できる。
・スピーキングテストが対面式なので、実際的で円滑なコミュニケーションが取れる。
・スコアが国際的に認知されており、世界中の進学、就職、移住に使える。
今回は世界で活躍するIELTSの専門家にインタビューするという、とても貴重な機会をいただき、IELTSのスコアの役立て方、受験のメリット、採点基準に合わせた対策法などを知ることができました。IELTSのスピーキングテストは対面式を重要視しており、これからの時代、自分の意見を英語で述べる力をつけるのに適していると感じました。
本記事で得た情報をもとに、4skillsでは今後もIELTS対策に関する信頼性の高い情報を配信していきたいと思います。ぜひお役立てください!
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IDP Education(本社:オーストラリア・メルボルン)は50年にわたり、オーストラリアをはじめとする英語圏に進学を希望する留学生の支援をしている企業です。主な事業内容はIELTSの共同所有者としてIELTSの運営・実施、海外留学のサポート、語学学校の運営です。日本でも、東京、大阪、福岡で「IDP-IELTS公式テストセンター」にて、多くの方にIELTSの受験機会を提供しています。
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