グラフに強くなるべき理由
英語4技能試験では、さまざまな情報を読み取り、その内容を分析したり、特徴を伝えたりする問題が出題されます。これは大学教育を受けたり、ビジネスでプレゼンするときなどに、その基本的な能力として情報の収集力、処理力、そして発信力が重要であり、さらにグローバル化の時代にあってはそれを英語で対応できる力が必要になるという認識にもとづいています。また、ビッグデータやAIの台頭により、情報をいかに活用できるかが、これからの時代を生きていく上で重要なポイントになります。
英語4技能試験では、さまざまな情報の中でも図表を素材にした問題がよく出題されています。しかし図表、特にグラフを用いた問題を苦手とする受験生が少なくありません。そこで3回に分けて掲載する「グラフに強くなろう」シリーズでは、グラフを使う利点やグラフを瞬時に読み取るコツについて、わかりやすくご説明します。
「データ」と「情報」の違い
私たちは「データ」という言葉と「情報」という言葉をあまり区別しないで使うことが多いですが、このふたつの言葉が意味するものは厳密にいうと別物です。「データ」とはそれ自体では何ら意味をもたない文字・符号・数値などを指し、これをある観点や目的から整理・分類・加工することで意味のある「情報」と呼ぶようになります。
データを分析してみる
一口にデータと言っても、そこにはさまざまな性格のデータがあります。個々のデータの特徴を素早くとらえ、分析し、その利用価値を判断する力が必要です。
例えば、ある町に住む住民の年齢、身長、体重についてのデータがあるとしましょう。データそのままでは、ランダムな数値の組み合わせに過ぎません。
《表1》
年齢 (歳) | 46 | 87 | 24 | 18 | 6 | 3 | … |
---|---|---|---|---|---|---|---|
身長 (cm) | 155 | 160 | 175 | 182 | 100 | 58 | … |
体重 (kg) | 58 | 70 | 65 | 70 | 35 | 20 | … |
このままではこのデータから全体の特徴をとらえることはできません。そこで、このデータを年齢順に並び変えてみます。
《表2》
年齢 (歳) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | … |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
身長 (cm) | 65 | 57 | 55 | 63 | 68 | 52 | 78 | 65 | … |
体重 (kg) | 6 | 7 | 7 | 8 | 9 | 6 | 11 | 9 | … |
次に同じデータを使って、0歳児の平均身長と体重を出してみましょう。このように並び変えてみると、例えば0歳児の身長は大体50〜70cm、体重は6〜9kgの範囲にあることがわかります。これを各年齢別に見ていけば、各年齢の身長と体重のおおよその範囲がわかるはずです。
《表3》
年齢 (歳) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
---|---|---|---|---|---|---|
身長 (cm) | 65 | 57 | 55 | 63 | 68 | 52 |
体重 (kg) | 6 | 7 | 7 | 8 | 9 | 6 |
上記のように集約してみると、年齢別の平均身長と平均体重がわかりますし、年齢が進むにつれて身長や体重が平均的にどのように変化していくのかもわかります。また、平均身長や平均体重がわかれば、個々のデータの数値のばらつき(平均との差)も見えてきます。
0歳児の平均身長(cm): (65+57+55+63+68+52)÷6=60
0歳児の平均体重(kg): (6+7+7+8+9+6)÷6=7.2
このように多数のデータをさまざまな観点(上記の例では「年齢」という観点)でまとめ、そこからデータの特徴をつかむ手法を「データ分析」といいます。データ分析には、データ全体(母集団)の特徴を探る「要約」と、各データに含まれる複数の変数の間の関係を探る「関係性分析」の方法があります。
分析方法 | 特徴 | 主な分析手法やキーワード |
---|---|---|
要約 | 基本的な指標で母集団の特徴をとらえる | 要約統計量(平均、分散、標準偏差、最大値・最小値。中央値、最頻値など)、グラフ化、標準化など |
関係性分析 | 各データに含まれる変数間の関係をとらえる | 散布図、回帰分析(相関分析)、クロス解析など |
グラフを使うと見えてくる情報
グラフはデータ分析を行う際に有効な道具として頻繁に活用されます。では、なぜグラフがよく使われるのでしょう?グラフがもつ最大の特長は「視覚性」です。《表1〜3》のように、データはそのままではすぐにその特徴をとらえるのが難しいものですが、グラフは一見しただけでその特徴をとらえ、情報を読み取ることができます。
例えば、《表3》の結果を次のようにグラフで表してみましょう。(0〜17歳までのデータで作成)
さあ、どうでしょうか。表のデータではわからなかった下記の情報が、グラフにすると見えてきますね。
① 0〜17歳の間、身長と体重は年齢とともに増加するが、同じように増加するわけでない。
② この間、身長はほぼ同じ割合で増加するのに対して、体重は後半の方が増え方が大きい。(体重よりも身長の増加が先行する)
③ 身長・体重とも15歳くらいまでの増え方に比べて、それ以降の増え方は少ない。
このように、0〜17歳の間に限ってみれば、まず身長が伸び、体重は少し遅れて増えていく、つまり先に上に伸び、後で横に伸びるのが人間の成長の仕方だということがグラフ化することでわかります。
さらに同じデータから、より長い期間の成長の特徴を探ってみましょう。
今度は全ての年齢の幅で身長と体重の変化をみるので、横軸を1歳単位ではなく、5歳区切りの年齢帯で集約しています。
このグラフからは、また新たな情報が見えてきます。
① 0〜10代後半までは身長・体重とも急速に増加する。
② その後は、体重は若干の増加が見られるが、身長の増加はほとんど見られない。
10代は「成長期」と呼ばれますが、身体的な成長についてはこの年齢層が人生の全期間を通じていかに特殊な時期かがグラフから実感できると思います。このように、年齢の幅を広げることで年齢層別の特徴が鮮明に浮き出てきます。
グラフはこのようにそのままではわかりづらい「データの特徴」をとらえることを通じて「データの意味=情報」を伝える上で有効な道具だから、頻繁に活用されるのです。
次回はグラフの種類と活用上の注意点についてお伝えします。詳しくは以下をクリック!▼