小学校の英語学習、英語「役立つ」は中学入学で3割減。その課題は?

小6から中1の英語学習、その現状は?

ベネッセホールディングスの社内シンクタンク「ベネッセ教育総合研究所」は6月13日、全国の中学1年生1,170人を対象に行った調査「中1生の英語学習に関する調査」の結果を発表した。小学校6年生時点では英語を「役立つ」と回答した児童が82.6%いたのに対し、中学1年生時点では53.9%まで減少。英語への期待は中学校入学後1年で約3割低下していることがわかった。
*出典元:中1生の英語学習に関する調査

ベネッセ教育総合研究所 グローバル教育研究室の加藤由美子室長は、調査の意義を「小学校と中学校の接続について把握」するためと説明。新学習指導要領が掲げる小中高一貫の英語4技能育成方針と教育現場における英語学習の現状を明らかにし、より良い「外国語活動」の早期化、英語としての教科化へつなげたいとした。

教育現場での英語学習が抱える課題解決を目的として2016年3~4月に実施された「中1生の英語学習に関する調査」は、全国の中学1年生が対象。回答者のうち、583名は小学6年生の時に「小学生の英語学習に関する調査」(2015年3月実施)にも回答しているため、小学6年生から中学1年生への英語学習に対する意識の変化を捉えることができる。

中1の壁、課題は小中接続

英語の授業に関する意識の変化を見ると、「小学校の英語の勉強は中学校で役立つ」と思うと肯定していた小学6年生は82.6%いたことに対し、丸1年後にあたる中学1年生時点では53.9%に減少。中学校にあがった時点でこれまでの英語(単語やゲームを通じて英語を学ぶ授業)が通用しなくなり、「小学校と中学校で学びのつながりを感じられていない可能性がある」とベネッセ教育総合研究所グローバル教育研究室研究員の福本優美子氏は指摘した。

課題は文法と単語か

中学生になってから「小学校でやっておきたかったこと」を聞くと、「もっと単語を覚えておきたかった」「文法について学んでおきたかった」など、文法や単語に関する意見があがった。実際に、英語の学習に関することであてはまることを回答させると、回答の上位は「文法が難しい」70.1%、「新しい文法事項や単語が次々と出てきて大変だ」69.6%、「単語のつづりを覚えるのが難しい」66.7%など、文法と単語に関するものが多かった。

コミュニケーションが解決のカギに

調査の中で、小学校英語が役立ったと考えている中学1年生は、現在の中学校生活で「自分の気持ちや考えをその場で考えて話す」「自分や家族や身近な人について英語で紹介する」といった、単語や文法などといった読み書きだけでなく、「話す」活動を多く行っていた。

また、小学校英語が役立ったと感じている中学1年生は、言葉で気持ちを表す項目で16.4ポイント、気持ちや考えを理解しようとする項目で19.1ポイント、伝え会おうとする項目で16.9ポイント、聞き返したり質問したりする項目で17.4ポイントと、いずれも役に立たないと感じている中学1年生よりも肯定する割合が高いこともわかっている。

小学校英語は「後ろ倒し」の検討も

ただし、福本氏は「今、単語や文法に苦労しているからと、小学校でも文法や単語を取り入れようとする、単純な中学校英語の『前倒し』は同時に『つまづきを前倒し』する可能性がある」とコメント。調査のスペシャルアドバイザーを務めた上智大学の吉田研作教授も、英語はコミュニケーション活動の中で知識や技能を習得していくことが自然であり、教育現場が支える英語能力の向上には、知識より体験が先行することが多い「小学校英語の教え方を中学校に『後ろ倒し』にすることが必要ではないか」と提案している。

2020年 ✕ 小中高校の英語教育 ✕ 4技能

調査を受け、ベネッセ教育総合研究所 グローバル教育研究室室長の加藤由美子は、2020年とその先に向けた小中高校における英語教育について「英語4技能の育成が成功するためには小学6年生と中学1年生での英語学習におけるギャップを埋めることが必要」と述べる。

また、新学習指導要項への移行措置が始まる2018年度(平成30年度)まであと1年を切ったことから、加藤室長は「(この流れの中で)小学校英語を始めた子どもたちが、中学校の頭でつまづかず、良い形で生涯英語を学んでいくためには、中学1年生時点での英語の学習が非常に重要である」と述べ、得られた研究結果は今後の研究や調査、分析に生かすとした。

*出典元:中1生の英語学習に関する調査

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