4技能化が完了したら、次は中身の勝負になる

連載:今さら聞けない、英語4技能って何?

第11回: 4技能化が完了したら、次は中身の勝負になる

連載第十一回

ここまで10回お届けしてきたこの連載も、今回がエピローグです。これからの学校教育や大学入試の英語が4技能重視に向かうことは、確かな流れでしょう。また、企業などでも一定レベル以上の英語力をもっていることが採用や昇進の条件になる例は増えるでしょう。これは日本人と英語の関係を大きく変える動きですから、しばらくの間はいろいろな混乱も起きるかもしれません。

まずは、この流れに乗ることが当面の課題になるでしょう。しかし、4技能はゴールではありません。私たちはそもそもこの問題がどうして生じてきたのかという原点に立ち戻って、「本当のゴール」を見失わないようにしなければなりません。

そもそも英語の4技能の重視は、政府の「戦略課題」として位置づけられたところから始まりました。急速に進むグローバル化に対して、日本という国の競争力を高める必要があるからです。そしてこの国際競争力はこれまでのように企業や団体を単位としたものだけではなく、日本人一人ひとりが、あるいは日常のレベルでも重要となるということでしたね。

ここで注意しなければいけないことは、英語の4技能は競争力の最も重要な要素である「中身(コンテンツ)の質」を決めるものではなくて、あくまでコンテンツの質を落とすことなく、より効果的に伝たえたり、広げたりするための「手段」に過ぎないということです。

つまり、4技能は「入れ物」や「乗り物」の役割を果たすものであって、競争力の決定的な要因は「中身」であるコンテンツの方にあります。4技能を、直接闘う「戦力」としてではなく、戦力をどのように活用するかという意味の「戦略」として位置づけたのは、そのためです。いかに見栄えのする入れ物であっても、いかに性能のよい乗り物であっても、その中が「空っぽ」だったら、誰もいいとは言わないでしょう。

このように4技能化が終わったら、次には「中身の勝負」が来ます。そしてそこで問われるのは、これまでのように企業や組織の戦力だけでなく、「個人としての戦力の質」なのです。人が社会人として生きる時間の長さを考えると、目の前の変化を乗り切ることだけを考えていてもだめなことはおわかりですね。人生という長い時間の中で、この4技能というものを考えていくことが大切になります。

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