第3回「高校英語の変化」では、小学校から高校までの英語教育の改革によって、高校の英語教育がどのように変化するのかについて考えてきました。第4回では、特に大学入試が変わる影響について考察します。
大学入試が変わる影響
先行する大学入試
「新学習指導要領」へ移行することで、日本の学校教育がこれまでにない幅で内容や方法を変えようとしていることは既にお話ししましたが、さらに今回の改革が学校教育だけでなく大学入試も一体的に改革することで実効性を高めようとしている点は重要です。
これまでも、たとえば「ゆとり教育」が学習内容を削減し、その分の時間をより自由で主体的な学習(「ゆとりの時間」やその後の「総合的な学習の時間」)に充てようとしたにもかかわらず、大学入試の段階で従来と変わらぬ知識量が求められたことがひとつの足かせとなったように、日本の学校教育に及ぼす大学入試の影響は非常に大きなものがあります。
その意味では、今回の学習指導要領の改訂の成果が試される2024年度(2025年度入学者)の入試から大学入試のシステムを変えるのが道理かと考えられます。しかし、大学入試は一足早く2020年度(2021年度入学者)の入試から変更となります。それは英語に関しても同様です。
新しい大学入試の英語試験
2020年度の入試から、英語の試験については2つの大きな変更が予定されています。
ひとつは、現在の大学入試センター試験に代わって実施される「大学入学共通テスト」における英語試験の内容が変わることであり、もうひとつは民間の「4技能資格・検定試験」の活用が拡大することです。国公立大学の一般選抜では、大学入学共通テストと民間試験の両方を活用する方針を示しています。
国公立大学の入試については【2021年度大学入試】どうなる?民間試験の活用状況と今後の動向をご覧ください。
変化は活用する試験の種類だけでなく、試験の内容にも変化が予想されます。たとえば、大学入学共通テストでは民間4技能試験との併用を前提に、現在の大学入試センター試験で出題されているSpeaking・Writing的な設問が削除されたり、新学習指導要領で強調されている実際のコミュニケーションの場面を想定した設問が多くなりそうです。
<国公立大学 一般入試における英語試験>
また、民間4技能試験では従来の大学入試ではなかなか実施できなかったSpeakingやWritingの技能も、他の技能と同様の配点で本格的に試されます。
大学入試が先行する理由
形式・内容とも大きな変化をともなう試験システムの変更は、本来ならばそれに先立つ高校教育の改革(つまり、新課程への移行)が行われた後に入試を変えるのが道理のはずです。それにもかかわらず、あえて入試の改革を先行させるのは、「大学入試の影響力で高校教育を変えたい」という願いが強いからではないかと考えられます。
つまり、これまでは教育改革のブレーキとなりがちだった大学入試を、今度は改革のアクセルとして活用しようという意図です。とは言え、新しい大学入試の英語試験システムについては東京大学が否定的な見解を打ち出すなど、円滑に動き出すまでにはまだまだ課題が多いようです。「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の気概で教育改革、そして入試改革に挑もうとしている文科省の今後の対応が注目されます。
今回のまとめ
第1回~4回にわたって、これからの日本の英語教育と大学入試の変化について検討してきました。
次回は最終回!このような変化に対して、受験生はどのような準備が必要となるのかについて考えてみます。
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