連載:今さら聞けない、英語4技能って何?
第7回: 4技能は皆賛成、でもどう測定する?
これからの日本人にとって、英語の4技能が大切になることをご説明しました。4技能の力をつける際に重要となるのは「各技能」の現状のレベルを正確に測り、そのレベルに合った学習を続けることです。このように、4技能を高めることを目的として実施されるのが英語の4技能試験です。
4技能とは、「Reading」「Writing」「Hearing」「Speaking」という、言語によるコミュニケーション活動に関する4つの能力を指します。
日本では長い間、英文を正確に読み取ることに重点をおいた、読解と文法中心の英語教育が行われてきました。と言うのも、日本では外国語は主に文献を読むために必要とされたため、読解法と読解の根拠となる語彙や文法が教育の内容となったのでした。したがって、英語の教員と言えども文献中心の教育を受けただけで、留学や海外生活の経験をもたない教員の方が多く、まして日常的な英語会話の経験のない教員が普通といった状態でした。高校や大学の入学試験でも、出題されるのは英文和訳や文法問題が圧倒的に多く、和文英訳(英作文)がわずかに出題される程度でした。
ところが、1990年代以降日本人の海外への渡航や外国人の来日が急増するようになると、国内外で日本人の英語力(特に、実用的なコミュニケーション能力)が広く意識されるようになりました。加えて、急速に進む経済のグローバル化や、国内にいても簡単に海外の外国人と接触することを可能にしたインターネットなどのIT技術の進歩・普及によって、日常的なレベルの英語の必要性と有用性が広く国民に認識されるようになりました。
そして、英語の4技能重視を決定的にしたのが、国の政策でした。グローバル化やIT革命を背景に英語教育の改革を最初に訴えたのは小渕首相でしたが、4技能が具体的な国の教育方針として示されるようになったのは、現在の第二次安倍内閣においてでした。
安倍内閣の最大の政治テーマはご存知のように「アベノミクス」であり、日本の経済成長のための「三本の矢」のうち「第三の矢」が「日本再興戦略」です。その中で、経済成長を実現するためには3つの条件が必要であり、そのひとつがこれまでの高い教育水準を維持することで「人的資源」を確保することであり、また新しい時代に求められる資質や能力をもった多様な人材を育てることで「経済全体の生産性」を高めることがもうひとつの条件であると述べています。
つまり、今後も日本が経済成長を続けていくための3つの条件のうち2つは教育に大きく依存しているとして、教育重視の姿勢を明確に示しているのです。英語の4技能重視はこのような政策を実現する前提条件のひとつとして位置づけられ、2020年から実施される新しい学習指導要領において具体化することになっています。
ところで教育というものは、教育するだけでは十分ではありません。当然、所期の教育効果が求められます。では、新しい英語教育の効果はどのように測ればよいのでしょうか。
教育の効果を確認するタイミングは大きく2つのものが考えられます。ひとつは、教育の途中あるいは終了時に効果を測る方法であり、もうひとつは次のステップに進むときにそれまでの教育効果を測る方法です。前者が到達度テストや終了認定テストなどであり、後者が入学試験や入社試験です。
英語の4技能についてもこの2つのタイミングで効果を測ることが想定されています。前者に相当するのが「全国学力調査」(小・中学校対象で、抽出調査。既に毎年実施されています)や「高等学校基礎学力テスト」(高校対象で、任意実施。2019年度より開始予定で現在のところ仮称)です。また後者については、現在の大学入試センター試験の後継となる「大学入学希望者学力評価テスト」(国立大および私立大入学希望者対象、2020年度から開始予定で現在のところ仮称)で4技能を科すことを検討しています。また入社試験や公務員試験などでは、既に外部試験を活用する例が多数見られます。
このようにこれからの日本では様々なタイミングで4技能を問われるようになりますが、ここで英語の4技能を試すにあたって大きな課題が浮上しています。それは実施上の問題で、これまでの入学試験や入社試験ではあまり経験のない「Hearing」や「Speaking」の試験について適切な出題ができるのかという点と、日本人が不得意な「Writing」や「Speaking」の試験を正しく、短時間のうちに採点できるかという点です。そこで注目されているのが、既に実施実績の豊富な「外部試験」を活用する方法です。