侭田 拓也(ままだ たくや)さんは立教大学経済学部を卒業後、2014年9月から2015年8月まで、スコットランドにあるエディンバラ大学の大学院で社会政策学を学んびました。今回は侭田さんがイギリス大学院進学に至った経緯、オススメIELTS対策法、そして海外での大学院の授業や課題を乗り切るための英語勉強法について、お聞きしました。
目次
イギリスの大学院進学について
どうしてイギリスの大学院に進学しようと思ったのですか?
大学3年生の時、所属していたゼミの先生に「大学院への進学を考えたらどうだ?」と言われたことがきっかけです。当時、周りの友人の多くが就職活動や公務員試験対策をしていた中、僕も当然のように就職活動をしていました。しかし先生の言葉をきっかけに「研究を通じて世の中を良くしていくことができるかもしれない」と考えるようになり、就職活動を中断して大学院進学の準備を始めました。
イギリスの大学院に決めたう理由は、僕の専門である社会政策学の研究が進んでいたからです。ゼミの先生としてはそのまま日本の大学院に進んで欲しかったようですが、「いつかは国際機関で働きたい!」という強い想いがあったため、せっかくなら英語力も身につき国際的な人脈が築けるであろう海外の大学院に進学したいと考えるようになりました。高校生の時に1年間アメリカに住んでいたこともあって、「もう1度海外へ!」という海外に対する強い憧れもありました。
志望校はどのようにして決めましたか?
社会政策の中でも特に雇用政策に興味を持っていたので、その分野を中心に学べるコースがある大学院を徹底的に調べました。すると候補に上がってきたのがエディンバラ大学、マンチェスター大学、バース大学、UCLなどでした。その中でも、とりわけ伝統と歴史のあるエディンバラ大学に憧れを持つようになりました。しかも留学した年にスコットランド独立をめぐる住民投票も控えていたため、エディンバラ大学に行けば歴史的瞬間に立ち会える点に魅力を感じていました。
どのように大学院進学への準備をはじめましたか?
イギリスの大学院に出願する際には、パーソナルステイトメントという「志望動機書」と、自分をよく知る大学の先生に書いてもらう「推薦状」が必要でしたので、その準備から始めました。
志望動機書ではオリジナリティーを出すため、就職活動の時よりも自己分析や大学研究を熱心に行いました。友人や先生にも協力してもらいながら「そもそもどうして雇用政策に興味があるのか」「なぜそのコースに進学したいのか」「卒業後はどうしたいのか」がより伝わるような表現・構成を追求しました。
推薦状に関しては、そもそも大学院への進学を提案してくれたのがゼミの先生だった上、その先生と友好な関係を築いていたおかげですんなり用意でき、結果、第1志望だったエディンバラ大学に合格しました。
入学要件を満たすための英語勉強法について
エディンバラ大学院入学に必要な英語力を教えてください。
僕が大学院を受験した年(2014年度)から、イギリスの教育機関へ留学・進学する際の英語能力証明として、TOEFLが使えなくなったんです。イギリス留学ではIELTSが主要な英語能力証明試験になりました。僕の希望のコースはIELTSの各モジュールの最低スコアが6.0で、Overallで7.0以上を取得することが要件でした。
初IELTSの結果はいかがでしたか?
大学卒業直前の3月にIELTSを受験しました。リーディングは7.5、リスニングは7.0、ライティングが5.0、スピーキングが5.5という、日本の英語教育を反映したようなスコアでした。高校生の時に1年間アメリカに住んでいたこともあって、英語に関しては自信があったのですが、その自信はもろくも崩壊しました。スコアが届いた日から、ライティングとスピーキングのスコアを上げるために猛勉強を始めました。
どのようにIELTS対策を進めましたか?
リーディングの出題記事の多くが”The Economist”や”Nature”などの雑誌記事からの転用と知ったので、”The Economist”の購読を始め、毎日最低1つ記事を読むことを習慣づけました。僕自身が興味のある社会政策や政治に関する記事だけではなく、頻出の分野である自然科学や科学技術に関連する記事も、少なくとも1日おきに読むようにしていました。
リスニングは”BBC”が無料で配信している“6 Minute English”というPodcastを使って勉強しました。イギリス英語に慣れる点に加え、IELTSのリスニングで出題されそうな内容が多いことが6 Minutes Englishの大きなメリットです。6 Minutes Englishで「交通手段として自転車が見直されている」という内容を聞いたあと、IELTSのリスニング講義問題で「公共交通機関発展の歴史」がテーマだった際は、聞いた内容を活かすことができました。
6 Minute Englishは再生速度が設定できることもメリットです。実際の速度はIELTSのリスニングよりもやや遅めで、1.5倍速くらいが実際の速度に近いと思います。僕自身、2倍速で聞き取れるようになった頃には、IELTSのリスニングはほぼ問題なく対応できるようになっていました。
スピーキングは、アメリカ人の友人に協力してもらい模擬練習をたくさん行いました。特別な表現を覚えたりテクニックを身につけることはせず、何度も何度も練習して試験の形式に慣れることを心がけました。練習のやり取りは録音し、後で聞きなおして「ここはこんなふうに表現した方がよかったな」「ここの発音が聞き取りにくかったな」と確認しました。そうしているうち、試験本番では面接官と会話を楽しむくらいの余裕を持ってスピーキング試験を終えることができました。
ライティングの勉強で工夫した点を教えてください。
ライティングは最大の難関でした。最初はIELTSの参考書の模範解答を丸暗記しながら、鍵となる単語や表現を覚えていきました。しかし、この方法ではスコアを上げることができませんでした。丸暗記しただけでは、同じようなトピックで出題された時は対応できたとしても、そうでない場合は使えなかったからです。これではいけないということで、「実際の試験で使えるための勉強法」を模索していきました。
そんな時に出会ったのが、”Cambridge University Press”から出版されている”Academic Vocabulary in Use”でした。IELTS対策のための参考書ではないのですが、アカデミック英語で使われるキーワードや表現をどのように使うかが詳しく書かれていたので、とても役に立ちました。IELTSライティングで悩んでいる方がいたら、ぜひお手にとってもらいたいオススメの1冊です。
この参考書を2~3回くり返してライティングの基礎を身につけた後に、IELTSの参考書の例題に挑戦してみると、手が自然に動いてしまうほどスラスラ書けるようになっていました。最終的にライティングは、リーディングとならび最も得意なモジュールとなり、最終的にスコア7.5を取れました。
現地での英語勉強法 について
入学直後の侭田さんの英語力は授業・課題で通用しましたか?
すぐに通用したのはリスニングくらいでしたね。入学してから1ヵ月間くらいは、大量の予習・復習のための文献をうまく処理できず徹夜で課題図書と格闘していました。授業中は他の生徒の勢いにのまれて、なかなか発言できないこともありましたし、恐らく他の生徒の3倍の時間をかけてエッセイを書いていました。
特にライティングに関してはIELTSで最終的にスコア7.5を取れた自信があったにも関わらず、実践で全く太刀打ちできなかったので、課題を投げ出したいことも何度もありました。しかし、書いているうちに語彙力や表現の幅が広がっていることが実感できたので、なんとか乗り切ることができました。
現地ではどのように英語力を伸ばしていきましたか?
授業中になかなか発言や質問ができない状態が1ヵ月ほど続いた頃、クラスで「日本政府の借金について日本人はどう思ってるんだろう?」という話になり、ただ1人日本人だった僕が発言せざるをえない状態になったことがありました。下手な英語だったと推測しますが、先生やクラスメイトが熱心に耳を傾けてくれました。僕の発言に対してさらに質問をしてくれたので、自分の話に興味を持ってくれていることに嬉しくなりました。その時から気持ちが楽になり、その後は授業中に遠慮せず発言できるようになりました。
ライティングに関しては、論文を読んで気に入った表現や言い回しをノートに書き写し、役立つ英語表現をストックすることを前期の終わりまで続けました。「これは英語でどう表現したらいいかな?」と疑問に感じた時にそのノートを見返すことで、より洗練された表現をエッセイで使えるようになってきました。
たとえばある論文で、”Little attention has been paid to 〜 (〜が注目を集めたことはほとんどない)”という表現を見つけたんです。これを自分のエッセイのイントロ部分で使ってみたところ、「なかなかいい導入パートだね」と先生からコメントをいただけました。この表現を使えたことで、自分のトピックの焦点をより明確に伝えることができたと思います。
また、課題が返却された後は必ず先生のオフィスにお邪魔して、「どうしてここが減点なのか」や「どうしたらもっと良いエッセイになったか」などを話し合いました。フィードバックを貰ううちに、アカデミックライティングで高評価につながるポイントをつかんでいくことができました。
他に英語力を鍛えるための工夫はしていましたか?
大学院在学中は、特に意識をして英語学習をしていたわけではありませんでした。勉強も日常生活も英語に囲まれていますから、自然と慣れていった感じです。
特にスピーキングは、先ほどお話しした授業でのエピソードに加え、剣道部の活動や友人との交流を通じて磨いていき、気づいたら大抵のことは英語で表現できるようになりました。不思議なのは、少しお酒を飲むと、普段言えないような小難しい表現を難なく操れるようになることでした(笑)。
まとめ
侭田さんはイギリス留学中に、英語そのものを勉強するよりも、実践をくり返しながら上達していったことが伺えました。大学院への進学後も、授業や課題をこなしているうちに段々と慣れていったということを強調されていましたね。