※本記事は2019年5月に公開されました。
目次
これまでの流れ
大学入試センター試験が2020年度(2021年1月実施)から「大学入学共通テスト」に変わります。この移行により、現在のセンター試験と同様に「リーディング」と「リスニング」の2技能に関するマークシート形式の英語試験が「共通テスト」で実施されるとともに、英語の4技能化を進める観点から民間の「英語資格・検定試験(4技能試験)」が併用されます。
詳しくは、【2021年度大学入試】どうなる?民間試験の活用状況と今後の動向をご参照ください。
上記の記事では、2019年1月までに各大学から発表された内容をもとに、民間試験の活用状況をお伝えしましたが、その時点では未公表の大学や具体的な内容が明らかになっていない大学などが半数近くありました。
民間試験の活用法については、2019年3月末までにすべての大学が公表するルールになっています。国公立大学については、一部を除き何らかの発表がされていますが、私立大学については未発表の大学が多くあります。
そこで今回も国公立大学について民間試験の活用法を集計しました。活用法を理解する上でいくつか重要なポイントがありますので、そのポイントに沿って活用法の概要を見ていきましょう。
※数値は弊社調べ(2019年4月10日時点)
Point.1 各大学は一般入試で民間試験を利用するのか?
図1にあるように、国公立大学の90%以上で民間試験が利用されます。利用しないのは北海道大・東北大など10校ほどの大学です。大学入試センターが対象として決定した試験のうち一部の民間試験だけを利用する大学が2校あります。現時点で活用法を発表していない国公立大学が6校あります。
この数値から、2021年度国公立大入試では、大半の大学で何らかの形で民間試験が利用されることがわかります。
Point.2 受験者は必ず受験しておかなければならないのか?
「利用」といっても、その方法はさまざまです。受験生の立場から考えた時、「民間試験を受けておかなければ志望校に出願できないのかどうか」がまず問題になります。
図2は、民間試験を利用するとした約90%の国公立大学について、受験の必要性を分類した結果です。
利用大学のうち、40%強の大学では受験しておくことが出願の条件となっています。(=図の「必受」)また10%ほどの大学では民間試験受験以外の方法として、「高校の認定書類」や「受験できなかった理由書」などを提出することで認めることもあるとしています。(=「代替あり」)
「任意」というのは、受験を条件とはしないものの、受験していればその成績を合否判定の資料として活用する大学です。
一方で、出願の条件なのかどうかが「不明」の大学も30%以上あります。今後の追加発表で条件とする大学の割合が増える可能性もありますので注意が必要ですが、まずはいずれかの民間試験を受けておく方が安心だと考えられます。
Point.3 民間試験で一定レベル以上の成績が必要か?
民間試験を受けるとすると、志望校出願に際して「一定レベル以上の成績が必要なのかどうか」も気になるところです。
図3は、必要とされる「到達レベル」がどれくらいなのかを集計したものです。利用大学のうち、具体的な到達レベルを示しているのは40%弱の大学で、そのうち60%がCEFRレベルのA2(6段階の下から2番目)、30%がA1(最も基礎的なレベル)となっています。A1は英検®️の3級に、A2は英検®️の準2級に相当するレベルです。
「なし」とするのは、成績レベルで出願の可否を決めるのではなく、成績を点数化して合否判定に利用する大学に多いです。またこの観点についても、詳細が不明な大学が約30%あります。
到達レベルとしては、出願要件となる場合および点数化して合否判定に活用する場合とも、A2レベル以上が目標の目安になりそうです。
Point.4 民間試験の成績を点数換算して、合否判定に利用するのか?
出願要件となる場合には一定レベルを超えることが目標となりますが、点数化して合否判定に活用する場合にはより高い成績を取ることが重要となってきます。
図4にあるとおり、民間試験利用大学のうち、その成績を「点数化」する大学と「点数化しない」大学はそれぞれ約40%となっていて、概ね半数の大学では成績(CEFRレベルやスコア)の高さが重要になります。
民間試験の成績を「点数化」して合否判定に活用する方法としては、次のようなものがあります。
①加点:大学が定める基準に沿って得点化し、それを共通テストの得点に加算する方法
②みなし満点:大学が定める基準を超えた場合、共通テストの英語得点を満点とみなす方法
③高得点:大学が定める基準に沿って得点化し、その得点と共通テストの英語得点を比べて、より高い得点を英語得点とする方法
図5は、得点化する大学について、その活用方法を集計した結果です。9割近くの大学が「加点」方式となっていて、「みなし満点」や「高得点」方式の大学はごく一部となっています。
「加点」方式の場合、どれくらいまで加点されるのかが次のポイントです。図6は、「加点」方式を採るとした大学に関して、加点比率を発表している大学の割合を示しています。比率を公表している大学は、半数弱にとどまります。
そして比率を公表している大学について、その加点比率(共通テストの英語得点と民間試験の換算得点を合計した総点に占める割合)を集計したのが、図7です。
約6割が11~20%、約3割が10%以下となっており、それ以外の比率の大学は1割強です。この中には、共通テストの英語成績は使わず民間試験の成績のみ採用する国際教養大学(秋田市)や第2次選抜(共通テストの成績により「予選」を行い、予選を通過した受験生に限って第2次選抜を実施する方式)でのみ民間試験の成績を活用する首都大学東京などが含まれます。
以上のことから、民間試験の成績を点数化する国公立大学は約半数で、全体の3~4割の大学では共通テストの得点に加点する方法を採りますが、加点の割合は20%以下がほとんどということになります。
「共通テスト」と「民間試験」の2つにどう対応すべきか
100点中の20点は侮れないとしても、そこに過度にエネルギーを費やすのも効率面で疑問があります。したがって、「共通テスト」と「民間試験」を全く別の2つの試験と考えてそれぞれに対策をするよりも、できるだけ共通の対策を工夫した上で、それでカバーできない民間試験特有の対策を加えるというのが、現実的な対応法と言えるかもしれません。ただし、共通テストよりも民間試験の方が早く実施されますので、時期の違いに留意した準備が必要になる点には注意が必要です。
発表が遅れている私立大ですが、慶應義塾大が「民間試験」を使わないとしている例もありますが、現在のセンター試験方式と同様、多くの私立大では受験生の選択肢を増やす(「民間試験」を活用する受験方式を設ける)方向で活用すると考えられます。
なお、2021年度入試全体の詳細が確定するのは、2020年の7月頃になると思われます。その発表を待っていては準備が間に合いませんので、志望校についてだけでもこまめに情報をチェックして、早めの準備に心がけましょう。
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