【大学入試共通テストと民間4技能試験の活用】~第4回~ 各大学の活用方針等

第4回 各大学の活用方針等

対応の詳細決定はこれから

2021年度以降の新しい大学入試のシステム、そして外部試験活用の枠組みがこのように決まったのですが、では各大学は実際にこの外部試験を合格者の判定にどのように扱うのでしょうか。

(1) 国公立大学

国立大学における外部試験の活用については、2018年3月に国立大学協会が次のようなガイドラインを発表しました。

新テストの枠組みにおいて、センターが認定した民間の資格・検定試験(以下、「認定試験」)を活用することが有効であるが、…、国立大学としては、新テストの枠組みにおける5教科7科目の位置づけとして認定試験を「一般選抜」の全受験生に課すとともに、平成35年度までは、センターの新テストにおいて実施される英語試験を併せて課すこととし、それらの結果を入学者選抜に活用する。…平成36年度以降に向けて、…入学者選抜機能としての実効性などを充分に検証しつつ、大学入学者選抜における英語4技能評価の在り方について、引き続き検討する。

また、具体的な活用のしかたとして、次の基本形を示しました。

各大学・学部等の方針に基づき、次の方法のいずれか、または双方を組み合わせて活用することを基本とする。

① 一定水準以上の認定試験の結果を出願資格とする。

② CEFR による対照表に基づき、新テストの英語試験の得点に加点する。CEFR による対照表に基づき加点する点数等の具体的な設定については、各大学・学部等が主体的に定めることとする。

つまり、「合格の資格」として一定の水準を求める形(この場合は「通過」または「不通過」の判定のみで、得点化はされません)と、さらに一定以上の水準をクリアすればその度合いに応じて大学入学共通テストの英語得点に加点する形の2つのパターンを想定して、各大学の判断でそのいずれか一方、または両方を採用するというものです。

また、加点する際には大学共通テストの英語の得点と合わせた総点のうち、外部試験の配点がおおむね2割以上になるように配慮するという方針も検討されているようです。 国立大学に関しては、少なくとも外部試験で一定のレベルをクリアする必要があります。(東京大学は当初「試験間の公平・公正が担保されていない」として、外部試験の受検は必要としながらもその成績を合格判定には使用しない方針を明らかにしていましたが、その後国大協のガイドラインに沿った活用を検討すると方針を変更しました。)

公立大学については国立大学との併願も多く受験生の混乱を避けるため、外部試験の活用については国立大学に歩調を合わせる方針です。なお、国公立大学の個別試験(2次試験)での活用については統一的な指針は設けられず、各大学の判断に任されます。

(2) 私立大学・短期大学

私立大学や短期大学では、各大学が独自に実施する入試のほか、現在のセンター試験を活用する入試が広く行われています。文科省は新しい共通試験である大学入学共通テストを活用する私立大学や短期大学にも外部試験の活用を強く促していますが、実際に活用されるのかどうかは未定です。

そもそも私立大学や短期大学がセンター試験を活用するようになったのは、選抜方法を多様化してより多くの志願者を集めたいと考えたからであり、センター試験を受験する50万人もの大学受験生を新たな受験負担なしに志願者に取り込めるチャンスと考えたからです。実際、私立大学を受験するためだけにセンター試験を受ける受験生は年々増加しています。

しかし、私立大学を受験するためだけに大学入学共通テストの英語試験以外に外部試験も受験しなければならなくなると、これまでのように志願者が集まらなくなるのではないかという危惧が私大関係者の中には強くあります。私立大学や短期大学については統一方針がありませんので、各大学が志願者募集に有効と判断する限りで(たとえば、多くの受験生に必須とするのではなく、英語4技能を得意にする受験生がその力を生かせる選抜方法の一つとして民間試験活用型選抜を設けるなどの方法によって)活用されるのではないかと考えられます。当面、各大学の動向に注視する必要があります。

(3) 2021年度の大学入試の概要

2021年度の各大学の入試が具体的にどのように変わるのか、外部試験はどのように活用されるのかは、各大学から発表される入試要項の予告を待たなければなりません。予告は2018年度中にされることになっていますので、2019年初頭には全国の各大学の対応が判明するはずです。

(本記事は、SAPIX YOZEMI GROUP発行『大学入学共通テストA to Z』掲載の記事を一部加筆・修正したものです。)


第5回:各試験の特徴と活用ポイント

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