大学入学共通テスト・英検®︎・GTEC CBTの違いを比較してみた

現在の大学入試センター試験は、2020年度実施(2021年度入学者)分から大学入学共通テスト(以下「共通テスト」)に変わるとともに、英語の試験については「共通テスト」の英語試験と「民間試験」の2つの試験を受けなければならなくなります。

受験生はこの2つの試験のための対策・準備が必要となりますが、それぞれ別々に準備するのは負担が大きくなります。したがって、この2つの試験について、どこまで共通の対策が可能か、あるいは別々に対策を講じなければならないことがどれくらいあるのかを理解することがポイントとなります。

今回は「共通テスト」(2018年2月実施の「試行調査」の問題)と「民間試験」を比較して、対策法を考えてみます。

*試験概要は2018年9月時点のものです。

共通テスト試行調査(プレテスト)解説

まずはじめに、共通テスト(2018年2月実施の「試行調査」)の特徴を説明します。以下は、リーディグ問題の解説です。

リーディング

第1問読解問題(情報検索)
第2問読解問題(テクストに基づく推測・事実と意見の区別)
第3問読解問題(ストーリー性のある文章の概要把握)
第4問読解問題(2つの視点から書かれた文章の比較)
第5問読解問題(論理展開・文章構造の把握)
第6問 読解問題(物語の概要把握)

配点:設定されていない
試験時間:80分

特徴:
●大学入試センター試験で必出の発音・アクセント問題、4択式の文法・語法問題、語句整序 問題などはなくなり、読解力の測定に特化した問題となっている。

●本文と設問選択肢の語数を合わせた総語数は約5200語で、現行のセンター試験よりも900語程増えて、より一層分量の多い試験となっている。

●全体として、本文と選択肢の内容を照合するだけでなく、複数の意見を整理する力や英文の構成を把握したり、趣旨を把握して要約する力が求められている。

●一部の設問で、当てはまる選択肢を全て選択させる問題が出題されている。

設問文などはすべて英語で表記されている。

●問題ごとに想定された CEFRレベルがあり、 A1〜B1レベルの問題を組み合わせて出題されている。

リスニング

以下は、リスニング問題の解説です。

第1問短い発話の聞き取り
第2問短い対話の聞き取り
第3問短い対話の聞き取り
第4問A説明文の聞き取り
第4問B複数の情報の比較
第5問講義の聞き取り
第6問対話・意見の聞き取り

配点:設定されていない
試験時間:30分

特徴:
●今回の問題は調査を目的としていて、すべての音声が2回流れるバージョンと、2回と1回が混在するバージョンの2種類が存在する。(本番では1種類に統一される)

●問題は6つの大問から成り、現行のセンター試験のリスニングよりも大問数が2問多い

●全体として、英語を聞き取ることだけでなく、発言の要旨を理解したり、複数の意見を比較・整理して正否を判断することも求められている。

また、問題冊子に記載されたノートにメモを取りながら解く問題や、ワークシートの空欄に入る語句を選ぶ問題など、音声を聞きながら作業を行う必要がある問題も出題されている。

●問題の設定で、センター試験では見られなかった「説明」「自己紹介」「講義」「意見」などを取り上げた問題があり、「日常的」「実際的」な場面設定を意識している。

●音声にはアメリカ英語だけでなくイギリス英語も使われている。また、話者に日本人が起用されている問題もある。

●一部の設問で、当てはまる選択肢を全て選択させる問題が出題されている。

●問題ごとに想定された CEFRレベルがあり、A1〜B1レベルの問題を組み合わせて出題されている。

民間試験(4技能試験)概要

次に、民間試験の概要を説明します。

試験日程

以下は、民間試験と、高校3年時の主要な学校行事の日程をまとめたものです。試験によって、毎月実施されている試験と、年数回しか実施されていない試験があることがわかりますね。

大学入学共通テストの一環として民間試験を受検する場合には予め申請する必要があり、申請できるのは、高校3年の4月〜12月に受検した2回までと制限されており、いつどの試験を受検するか、早め早めに計画を立てて勉強をしていかないといけません。

*日程は2018年度版 ○:CBT(コンピュータによるテスト)●:PBT(紙媒体によるテスト)

民間試験と共通テストの比較、対策

共通テスト・民間試験それぞれの試験概要はおさえられましたか?ここからは、いろいろな4技能試験の中でも特に受検者が多くなると予想される英検と、GTEC CBTに絞り込み、リーディング問題の内容を共通テストと比較してみます。

また、共通テストと一緒に対策できることと、できないこと(追加で勉強することが求められること)を徹底解説していきます!

*英検については、1次試験合格者のみが2次試験(スピーキングテスト)を受検できる従来型は対象とはならず、2018年度より開始した「英検CBT」、2019年度開始予定の「英検2020 2 days S-Interview(公開会場実施)」および「英検2020 1 day S-CBT(1日完結型)」が対象となります。

英検®︎

今回は従来型の英検2級を取り上げます。従来型は対象とはなりませんが、レベル的な比較がしやすいので、従来型の2級問題を採用します。

英検2級は、準2級までしっかりつけてきた英語力を実生活の様々な分野で応用できるレベルに高めることが目標となる級で、出題される問題は高校卒業・大学入試レベルが目安です。

日程は、来年度以降の参考にしていただくために、2018年度の英検 CBTの日程をご紹介します。

2018年度 英検 CBT 試験日程

回次一次試験(筆記試験)
第2回8月19日(日)   9月16日(日) 10月14日(日) 11月18日(日)
第3回12月9日(日)   2019年1月13日(日) 2019年2月17日(日) 2019年3月17日(日)

2018年は、第1回が行われておりませんが、2020年度には第1回が4〜6月、第2回が7〜9月、第3回が10〜12月となり、それぞれ1ヶ月に1度実施される予定です。

2019年度以降は日程や時期が変更になる可能性があるため、お気をつけください。

英検®︎2級問題の特徴

従来型 英検2級

測定技能大問形式課題問題内容問題数目標解答時間
リーディング1短文の語句
空所補充
文脈に合う適切な語句を補う2015分
2長文の語句
空所補充
パッセージの空所に文脈に合う適切な語句を補う610分
3長文の内容
一致選択
パッセージの内容に関する質問を答える1240分

共通テストとの内容の比較

試験時間:
英検2級 約65分、共通テスト 80分

問題数:
英検2級 38問、共通テスト 34問
→英検は時間が15分少なく設問数が多いので、速解力が試される。

CEFRのレベル:
英検2級 A2〜B1、共通テスト A1〜B1
→問題のレベルは、共通テストよりもやや高いと言える。

文章量:
短文は共通テストに出題なし。
英検の長文(問題3のABC)に関しては、共通テストと同じ程度の文章量

英検2級合格に必要な英語レベル:
社会性のある内容の文章を読んで理解することができるレベル。

文章のテーマ:
英検2級 日常生活の会話アカデミックな内容。
共通テスト 大学の講義で出てくるような内容。

語彙レベル:
英検は共通テストよりも高いため、英検の語彙対策をしておけば共通テストにも活かせる。

選択肢:
英検はすべて4択問題で、共通テストのような、当てはまる選択肢を全て選択させる問題は出題されない。

問題文:
英検2級 日本語での説明あり
共通テスト すべて英語

文章の続きを選ぶ問題:
英検2級には、文章の続きを問う問題はありませんが、共通テストには多く出題されている。

(例)If you go to the park on November 13 without an advance ticket, at the entrance gate you will probably ◯◯.
1. go straight in
2. have to pay 55% more to enter
3. have no show your parking ticket
4. stand in a long line

英検®︎2級 vs 共通テスト対策法

次に、英検2級の問題を、大問ごとに共通テストと比較しながら、共通してできること・できないことをご紹介します。【大問1 短文の語句空所補充問題】

読解を中心とする共通テストにはない問題形式ですが、単語・熟語を覚えるには最適の問題といえます。単語・熟語を覚えるのが苦手という方は、英検2級の過去問を解きながら語彙を増やすこともできるでしょう。

【大問2 長文の語句空所補充問題】

こちらも共通テストにはない問題形式です。文章・文脈を理解することが求められるため、読解力を上げることのできる問題です。共通テストがグラフや広告などの情報から解答の根拠を探し出すのに対し、こちらの空所補充問題は内容を文法的にも丁寧に確かめながら、当てはまる語を選択しなければなりません。

【大問3A Eメール問題】

この問題は共通テストにも類似した問題といえるでしょう。Eメールということもあり、あまり難しい文法、語彙は使われていません。共通テストはこちらの問題に比べるとパラフレーズされているところが多く見られるので、同じ文意の違った言い方をたくさん覚えておくことをオススメします。

【問題3B・C 長文問題】

この問題は科学的、社会的記事なので共通テストに出てくる問題よりも、よりアカデミックな文章です。語彙レベルも全体の中でもっとも高くなるため、過去問を解きながらわからない語彙があったら随時覚えていきましょう。

総じて、共通テストで必要となる内容は英検2級に含まれますが、英検2級ではより高い語彙レベルが求められるといえるでしょう。

GTEC CBT

GTEC CBTは主に高2から高3生を対象に、「リスニング」「リーディング」「ライティング」「スピーキング」の英語4技能を測定する試験です。4技能すベて、出題から解答まですべてコンピュータで実施されます。GTEC CBTの試験内容はCEFRの英語能力測定基準に基づき作成されています。公式問題集によると、問題数と試験時間は、受検者によって異なります。

2018年度試験日程

回次一次試験
第1回7月15日(日)
第2回11月11日(日)
第3回2019年3月24日(日)

GTEC CBTの受検者の多くは高3生のようですが、共通テストの一環として受験するのであれば、第1回、第2回が対象となります。

GTEC CBT 問題の特徴

リーディング問題は、学生生活や、講義で実際に遭遇する幅広い媒体・情報から出題し、目的に合わせて概要や要点を把握する力を測定します。アカデミックな文章について、著者の意図を理解して言外の意味を読み取る出題もあります。

出題内容
1. 英文を素早く読んで、文全体の概要や要点を把握する問題
2. 目的に合わせて、英文の趣旨や詳細情報を読み取る問題
3. 英文を書いたり話したりするために必要な情報を読み取る問題
4. 筆者の意図を推察する問題
5. 様々な意見の中から筆者の意見を特定する問題

共通テストとの内容の比較

試験時間:
GTEC CBT 約55分(受検者によって異なる)
共通テスト 80分

問題数:
GTEC CBT 約40問(受検者によって異なる)共通テスト 34問
→GTEC CBTでは、1問を約1分半の速度で答えていく必要があります。

CEFRのレベル:
GTEC CBT A1〜C1、共通テスト A1〜B1
GTEC CBTの方が、幅広いレベル設定となっています。

語彙レベル
GTEC CBTの方が共通テストよりも高いため、GTEC CBTの語彙対策をしておけば共通テストにも活かせる。

選択肢
すべて4択問題で、共通テストのような、当てはまる選択肢を全て選択させる問題は出題されない。

問題文
GTEC CBT すべて英語
共通テスト すべて英語。

文章のテーマ
大学で経験するような講義や学生生活なので、共通テストと似ていると言えるが、共通テストよりも出題の素材は広く、大学のウェブサイト、チラシ、掲示板、講義のノートやEメールなどさまざまな問題が出題される。

GTEC CBT vs 共通テスト 対策法

【GTEC CBTはパソコンで行う】

もっとも大きな違いは、GTEC CBTがパソコンで行われる試験だということです。リーディングにおいては、紙ベースの共通テストや英検と異なり、問題文に気軽に下線を入れたりすることが難しいでしょう。またライティングはタイピングでの試験となります。普段ほとんどパソコンに触らない、という方は英文をタイピングで入力する練習をする事をオススメします。

【GTEC CBTは問題数が多い】

リーディング試験は、上記の通り問題数が共通テストよりも多くなります。解く際は、スキャニング・スキミングといったテクニックを使うことをオススメします。

【問題内容】

問題の設定やテーマは共通テストと似ていますが、先にも述べたとおり、問題数と試験時間は、受検者によって異なります。C1のかなり難易度が高い問題が出る可能性もあるため、公式問題集で事前に勉強しておきましょう。

【読解力】

GTEC CBTは問題量は多いですが、比較的解答の根拠となる部分が見つけやすいです。それに対し、共通テストはグラフなどの細かい表記まで、解答の根拠となる場合があります。GTEC CBTはスピード、共通テストは隅々まで、注意深く読むことが求められるでしょう。

【文章の続きを選ぶ問題】

GTEC CBTには、文章の続きを選ぶ問題はありませんが、共通テストには多く出題されています。(英検の例に同じ)

総じて、GTEC CBTは共通テストの内容やレベルをより幅広くした試験といえます。また、CBTという形式に伴う対策の追加も必要になります。

まとめ

同時期に異なる試験の対策を進めるのは難しいことですが、共通テストと民間試験(4技能試験)の重なる点をおさえ、効率よく勉強を進めていきましょう。

特に両試験に共通するリーディング力とリスニング力は、英語のコミュニケーション力(4技能統合力)の基本となる部分です。試験の実施時期とは関係なく、早い時期からしっかり取り組むことが、両試験で高得点を取る条件となります。みなさんの大学受験を、心から応援しています!

※英検®は、公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。このコンテンツは、公益財団法人 日本英語検定協会の承認や推奨、その他の検討を受けたものではありません。

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