第1回「大学入学共通テスト」試行調査の目的では、試行調査をなぜ行うのか、その結果はどのように活用されるのかについてお話しました。また形式面でどのような変化があったかを確認しました。第2回、第3回 では、今回の試行調査の結果分析から、どのような変化が考えられるかについて見ていきます。
正答率情報にもとづく分析
今回の試行調査の結果については、設問ごとの正答率も公表されています。このデータから、今回の試験問題の難易度や受験生の弱点などを探ってみましょう。
① 科目の難易度
科目単位に、正答率で小問の難易度構成を見たものです(科目全体の難易度)。
難問(赤い部分)、易問(緑の部分)、そして中間の難易度の問題(ベージュの部分)がほぼバランスよく構成されていて、今回の英語の問題については、難易度別設問の割合として適当ではなかったかと思われます。「リーディング(R)」および「リスニング(L)」の状況を「国語」(下図)と比べると、英語の方が難易度の異なる設問が適度に配置されていることがわかります。(リスニングについては、設問数が多く、読み上げ回数が一部1回のみだったB問題の方が正答率が低くなっています)
② 大問ごとの難易度
大問単位に、正答率で小問の難易度構成を見たものです(大問ごとの難易度)。
「リーディング」については、大問1・2が易、大問5・6が難、大問3・4がその中間の難易度といった状況です。「リスニング」については、大問2が易、大問5・6が難、大問1・3・4がその中間でした。(ただし、大問1についてはできた生徒とできなかった生徒に2分される傾向があります)
大問によって難易度に差が出た原因のひとつは、予め大問ごとに設定した、問題で使用する英語の難易度(CEFRレベル)との関係と考えられます。「リーディング」では大問5・6、「リスニング」では大問4・5・6がCEFR‐B1レベルと、やや難しいレベル設定となっていて、相応の結果になったと思われます。ただし「リスニング」第4問については、他より正答率が高くなっています。
③ 小問番号別の正答率
すべての大問を通じて、小問が進むほど難しくなっているかどうかを見ます。
「リーディング」「リスニング」とも、小問が進むほど正答率が下がる傾向が見られます。これは、一般に問題を作成するときには、まず基本的な内容を問い、徐々に複雑な質問や細かな内容に関する質問、あるいは前出の設問を前提とした内容を問うという傾向があることに関係しています。ただし、今回の英語の問題では設問間の関連性があまりない設問も多いので、この傾向の影響はあまり大きくないと思われます。
第3回:試行調査の結果から見えてくるもの(その2)