現在の大学入試センター試験は、2020年度(2021年1月実施)から新しい性格のテストである「大学入学共通テスト」に変わります。これにともない、2020年度から2023年度までの間は、英語の試験として、現在のセンター試験同様の「リーディング」と「リスニング」に関するマークシート形式の「共通テスト」の英語試験とともに、年間数回実施される民間の英語資格・検定試験(4技能試験)が併用されることになっています。
現在の大学入試センター試験は、すべての国公立大学のほか、約9割の私立大学でも活用されている「大学入試のスタンダード試験」ともいえる標準的なテストです。国公立大学については「共通テスト」(英語を含む)を引き続き活用すること、また民間試験も原則として受験者に課す方針を決めています。ただし、活用法は各大学の方針で定めることになっています。
この方針に沿って、全国の国公立大学は2021年度の入学者選抜の概要を2019年3月までに発表することになっていますが、その締め切りまであと2ヵ月に迫った現在でも、具体的な活用法が決まっていない大学が数多くあります。なお、私立大学も同様の対応が必要ですが、概要を決定している大学はごく一部にとどまっているため、本記事では国公立大学の民間試験の活用状況から受験の必要性や今後の動向について考えていきます。
※数値は弊社調べ 2019年1月18日時点
大学入試で、民間試験は必須なの?
まず、民間試験の活用を含めた入試概要を発表した大学の割合ですが、国立大学で8割強、公立大学では7割弱となっています。国公立全体ではまだ2割の大学が発表していないことになりますが、未発表の大学が概要を決定するのは期限である3月末ぎりぎり、あるいは4月にずれ込む事態も考えられます。
次に、既に発表された大学での活用方法について見ていきましょう。民間試験を受験者に課すのかどうかですが、現状「不要」とするのは公立大学で2校あるだけで、ほぼすべての大学で何らかの形で利用することになりそうです。ただし、受験を出願の必須条件とはっきり言明している大学は国立大学で約4割、公立大学では1割未満と少なくなっています。
また、民間試験を利用するとしているものの、その具体的な利用方法を明らかにしていない大学は国立大学で30%、公立大学で52%もあり、未公表の大学も含めると国立大学の5割強、公立大学の8割強で民間試験が入試の中でどのような位置づけとなるかがまだわからないという状況です。このように多くの国公立大学で対応が決められないのは、先に東京大、京都大、東北大などの有力大学が、民間試験についてはさまざまな面で公平性を担保できないという理由で出願の要件としないと発表した影響が大きいと思われます。
《民間試験の活用状況》
民間試験の扱い | 国立 | 公立 |
---|---|---|
出願要件 | 34 | 7 |
出願要件の一方法 | 7 | 2 |
不要 | 1 | 2 |
高得点の方を利用 | 0 | 4 |
利用(要件記載なし) | 25 | 48 |
未公表 | 16 | 29 |
成績はどう利用されるの?
さて民間試験の利用方法としては、「出願の要件とする」または「成績を得点化する」方法が考えられます。前者は民間試験で大学が指定するCEFRレベルをクリアすれば、最終的な合否はその他の試験の成績次第で決まるので、民間試験でスコアの高さは問題となりません。しかし、後者の場合は民間試験の成績を得点化(CEFRレベルごとに得点を決める方法と、スコアを直接得点化する方法があります)して、他の試験の得点と合計することになるため、民間試験でより高いスコアを取った方が有利になります。
この点についても、詳細を発表していない大学が国立大学の4割強、公立大学の7割強もあるため、正確な全体像はまだはっきりしていません。ただ、具体的な方法を明らかにした大学について見てみると、国立大学についてはほぼ半数の大学で、公立大学については約7割の大学が「得点化して加点または合否判定に利用する」としています。
《民間試験の利用方法》
民間試験の成績の扱い | 国立 | 公立 |
---|---|---|
加点 | 25 | 12 |
共通テストと組み合わせ | 1 | 0 |
加点なし | 20 | 5 |
スコア利用 | 0 | 4 |
不要 | 1 | 2 |
詳細不明 | 20 | 40 |
未公表 | 16 | 29 |
これからどう準備していけばいいの?
大学受験では、正確な情報にもとづいていろいろな判断を下すことが大切です。また、受験対策はその内容にもよりますが、総じて長い準備期間を必要とします。そのような事情があるため、大きな入試改革が行われる場合は、入試の2年前までに概要を発表するルールになっているのです。ですが、2021年度の受験生にとって必要な情報はまだ充分には開示されていないのが現状です。このような場合は、現在入手できる情報から2021年度入試を推測して、先々でできるだけ漏れができないような準備をする必要があります。そのような観点で、最大公約数としての対応方針を考えてみましょう。
民間試験受験の有無ですが、「要件とはしない」と明言している大学はごく一部ですから、受験する方向で考えるべきでしょう。また、どれくらいの準備が必要かという点については、成績を得点化する大学が多いことを考えると、一定レベル以上(CEFRレベルでA2以上、できればB1以上)を目標に学習計画を考えるのが適当ではないでしょうか。
新しい入試システムで最初に受験することになる現在の高校1年生(2019年1月時点)が、実際に民間試験を受験するのは3年生の春以降となりますから、あと1年少々しかありません。準備期間として充分とは言えませんので、できるだけ早く受験の有無を決断して、具体的な準備に取りかかる必要があります。
なお、未発表の国公立大学を含め、私立大学の新入試の概要が今から続々公表されると思われますので、入試情報には注意を払いましょう。
※新しい大学入試のシステムについては、大学入学共通テストと民間4技能試験の活用を参照してください。