「日本人のちょっとヘンな英語」デイビッド・セイン氏インタビュー

デイビッドセインさん

累計350万部の英語関連著作を刊行しているデイビッド・セインさん。長年日本の英語教育に携わっており、現在は英会話学校の校長としてもご活躍される傍ら、数多くの著書を出版。代表作に「日本人のちょっとヘンな英語」など。

今回はそんなデイビッド・セインさんに効果的な英語学習法についてお話を伺った。

日本人はアメリカ人よりも英文法に詳しい!?

「日本人の英語レベルは低い!」とよく言われますが、文法などの英語に関する知識レベルはとても高いです。高校や大学の入試試験で出題される難易度の高い文法問題は、ネイティヴですら解けない問題もあります。とは言っても、日本人の英会話のレベルは、残念ながら英語に関する知識レベルに比べてとても低いです。それは日本の英語教育が起因しているように思います。

日本の英語教育が悪いとは言いませんが、英語が歴史や地理といった暗記を必要とする教科と同じような扱いになっているから、会話レベルが低いのだと思います。つまり、知識をどれだけ多く獲得したかが評価の基準になっているということです。しかし英語は言葉なので、例えば「Are you hungry?」と質問をされたら、「Are」が動詞で、「you」が主語で…などと考える前に、相手の方に意識が向かないといけないのです。

聞き取りしかできない英語が一番危険?

競争相手が世界中にいる現代のような時代では、英語を使いこなせることが圧倒的に有利になります。情報の多さも新しさも、英語に敵う言語はありません。競争相手が世界中にいる時代だからこそ、英語を学ぶ人がどんどん増えているのです。

しかし、あなたの英語力は「相手の英語は理解できるが、言い返すことも、説得することもできない」状態になっていませんか? 私は多くの日本人が「Opinion」を述べられない中途半端な英語力しか身につけていないと思います。このような未熟な英語のままでは、外国人に反論や説得ができず、相手のいいなりになりかねないのです。今までは「日本人=英語が話せない」というイメージがあったので、外国人からの侵入に守られてきました。しかし、外国人がどんどん入ってきている現在のような状況では、相手の言っていることが理解できるだけの中途半端な英語では不十分なのです。デイビッドセインさん2

日本人はもともと自分の「Opinion」を言わない性格なのか?

日本人は自分の「Opinion」を言わない性格だと思われがちですが、それは違うと思います。東京大学でのデモや成田空港のデモなど、日本人も「Opinion」をはっきりと言う国民でした。なぜ日本人が「Opinion」を言わなくなっているのかというと、その後に続く「英雄」が現れなかったからだと思います。アメリカではベトナム戦争が終わり、大統領が変わり、多くのヒーローが生まれました。アメリカでは、「Opinion」を言えば世界を変えることができる、頑張れば報われると多くの人が考えるから、積極的に「Opinion」を言うのだと思います。今の日本人の若者は、あまり「Opinion」を言わなくなっているような気がしますが、私が日本に来たばかりのときには、よく年配の方に説教をされました。今の若者にも、ぜひ自分の「Opinion」を積極的に述べてほしいと思います。それが、英語の上達で重要なことだと思います。

英語上達の鍵は「Opinion」を言うこと?

日本語の「意見」は英語で「Opinion」と翻訳されますが、この翻訳にふと違和感を抱きました。アメリカでは「Opinion」と言うとき、それは「思いつき」なので、別に何を言っても良いのです。アメリカの学校では、生徒がどれだけ手を挙げたかで成績が評価されますし、生徒たちも「Opinion」を問われているので、好き放題言うことができます。合っている、間違っている、ということよりも、とにかく発信することが大切なのです。そのため、「This is my opinion.」と言われたら、それは聞き流しても良いのです。

ちなみに日本語で言う「意見」は英語で「Position」と翻訳すべきだと思います。「What’s your position?」と聞かれたら、ネイティヴだって答えるのはとても難しいです。日本人はもっと「Opinion」を発信する機会を増やせば、英語が効率よく上達すると思います。よく、女性の方が男性よりも英語の上達が早いと言いますが、これは女性の方がより「Opinion」を言う性格だからかもしれません。

感情のない英語を学ぶ日本人

日本の学校では「英語は覚えるもの」と教わるようですが、そうではなく英語は「キャッチボールするもの」という認識を子供たちに持ってもらいたいです。教科書をただ音読するような感情を伴わない英語を学ぶのではなく、教科書を読むときでさえ、相槌を打ちながら著者とのキャッチボールをしてください。教科書を読んで悲しんだり、喜んだりすることで、身体で英語を学ぶことができるはずです。「Output」することは非常に重要ですが、ただ単に「Output」するのではなく、自分の感情を伴った英語を「Output」することで、学習効果は高まります。他人の作った英語には感情を入れにくいので、自分自身で英語を作って、それを話すというスタイルが学習において理想的です。

理想の授業と理想の生徒像

理想的な授業の形態は、リアルタイムで生徒にフィードバックを与えることができるマンツーマン授業です。理想的な授業内容は、生徒が自分の話したいトピックを自分で用意して、それを授業中に話すことです。先生ではなく、生徒が授業を作っていくことが良いのです。

しかし、お金を払っている生徒は受け身である場合が多いので、何か先生から与えられるものだと期待して授業に来ます。伸びない生徒の典型的な例は「知識を得ようとしている生徒」です。その一方で伸びる生徒は、「自分から積極的に何かを発信しようとする生徒」です。正直、週1時間の授業だと1年で48時間、つまり2日分にしかならないので、それだけで英語を使いこなせるようにはなりません。授業の前に考えたりする準備が大切ですし、教科書の英語ではなく自分の英語を発言することが最も大切です。

最後に英語学習をする方へのメッセージ

自分の言葉は自分で作るしかありません。ですから受動的に英語を学ぶのではなく、積極的に学んでいきましょう。知識をたくさん「Input」することはもちろん大切ですが、最も大切なことは、自分の英語をどんどん「Output」することです。

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